第14話 激突(1)

「突然、宙に掘り投げられたから死ぬかと思いましたが、


 意外と大丈夫なものなんですね。」


前からくるすごい空気抵抗もへの耐性も付き、


今にもばらばらになりそうだった体を引き締めるコツもつかんできた。


もう、こんなことは、もう二度とごめんだけれど…。


命があったので、とても幸せだと素直に思う竜の少女だった。




しかし、ふと気づいたら、ヒューと落ちていて、


まずい、と思ったときには


もうすでに目と鼻の先に立派で豪華だが、派手ではない色の板が見えていた。


抵抗する暇もなく、竜の少女は城壁に激突し、めり込む。


「うぎゃあああああ」


しかし、残念ながらと言うべきか、幸いにと言うべきか、


その叫び声は城壁近くにいた門番たちに聞こえることはなかった。


「攻撃確認、迎撃準備開始。」


しかし、こうなってしまった以上、帝国の兵たちがまもなく駆けつけるだろう。



その時、竜の少女はというと、ずきずきと痛む頭を押さえながら、


ばらばらに壊れた城壁を見て、


壊れたロボットのような声をあげる。


「うがががががが」


「これ、どうしましょう⁉」


「…えっと、こんな立派な城壁って何でできているのでしょうか…。


 材料さえ解ればなんとか作れるはずなのですが…。」


自分が壊してしまった城壁を見て、右往左往している竜の少女の耳に


帝国の兵士の声が響く。


「うがががががが」



先ほどまで、


おじいさんのあまりの病的脳筋っぷりに心底心配していた竜の少女だったが、


今の姿を見られると、ラグナ王国内にいる1億人中、9999万999人が


自分が心底心配していたおじいさんのあまりの病的脳筋っぷりよりも、


自分の方が圧倒的に心配されることは確実なのに、


そんなことは露知らず、いつもどおりの、のんきさだった。




「ヤバいですね。」


竜の少女は少しの間、悩んだ挙句の果てに、


申し訳ない気持ちを抑えて、


短く、小さい体をそれよりも小さい翼で持ち上げて先に進むのだった。






「それにしても、オーバ・チュアさんはすごかったですね。」


「あれは、多少自信があるどころの話ではないのですが…」


いつも、楽観的過ぎる彼女であったが、


どこかのおじいちゃんたちがする球技を彷彿とさせる一振りで


2000㎞もの距離を飛ばす見事なショットを体感して


この時ばかりは、違和感を感じたのだろう。




しかし、それでも、いや違ったのかもしれないが、


やはり、彼女は彼女だった。


「…よほど、頑張られたのですね。」


竜の少女は、ほろりと涙を流す。







すみません。

今回も、こちら側の都合で、この話と次の話がけっこう短くなってしまいましたので、まとめて投稿してしまいました。

これからも、このようなことが多いかもしれませんが、よろしくお願いします。

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