第3話 第七王子

少年は、混乱していた。


なぜなら、赤ちゃんとして生まれてきた頃から自我と前世の記憶があったからだ。


しかし、目の前はひどくぼやけていて、


体もなかなか思うように動かせず、


周りの状況がわからない状態がしばらく続いた。




その間、少年は何もしないのも暇なので、自分の体の中に意識を向けた。


すると、少年は自分の体の中で温かいものが動いていることに気が付いた。


少年は体の中の温かいものがエネルギーのように感じたため、


それを動かすように試行錯誤を続け、


ついにはそのエネルギーを自由に体中で移動させ、


少しずつだが、増やすこともできるようになった。




ちょうど、それができるようになった3歳くらいから、


五感が発達し、言語も大体わかってきて、状況把握もできるようになっていた。



鏡を見ると、まだぼんやりとしかわからないが、


そこには金髪に碧眼で顔は青白く、体は細く、小さい自分が映っていた。


また、病気で左目の視力を失っているから、左目には眼帯をしていた。



少年は、それから情報収集にいそしみ、


温かいエネルギーみたいなものが魔力と呼ばれることと、


自分がこのラグナ王国の第七王子であり、


生まれつき病弱で魔力が少なく、側室の子であることから、


この城の大体の人には嫌われていて存在すら気にかけてもらえないでいるため、


何の教育もされておらず、ほったらかされていることを知った。



それからは、普通の子供を演じ続けながらも、日々、魔力と対峙する日が続いた。


自分の母親と父親である王はその少年に冷たかった。


そのため、自分の部屋にこもることが多く、


必然的に、魔力に意識を向ける時間も多くなった。


そのおかげで、すごく痛い思いをしながらも、


なかなか増えない魔力を、


生まれたときでは周りの人の何百倍も少なかった状態から、約4年で


周りの人と同じ魔力量が蓄えられる状態になるまでに成長した。


そのカギとなったのは、


前世でも持っていた人並みならぬほどの痛みへの我慢強さと


若さゆえの異常な成長速度だった。




この世界での常識では、魔法は魔力の量によって左右されると考えられていた。


魔法の行使には、呪文を唱えることと、杖を使うことのどちらか、


またはその両方が必要になってくる。


そのうえ、2人以上でバディーやチームをコンビネーションを考えたり、


コミュニケーションをしっかりととるための練習も必要になってきたりする。


また、魔法は魔力の制御がとても難しく、


小さい頃から教えると魔力が暴走してしまうため、


絶対に子供が小さい頃には魔法に関するものは


目に触れさせないようにしなければならない。


しかし、魔力はなかなか増えないため、生まれもった魔力が肝心であり、


子供の頃から鍛えることも難しいため、才能に大きく依存してしまう。



それゆえに、今の時代の流れとしては


軍では類まれな才能を認められたごく少数の逸材のみが重宝され、


それ以外では魔法は時代遅れだとみなす人が多くなり、


デメリットが多い魔法よりもメリットが多い近接戦闘が


人々の人気の大部分を占めていた。





「さて、そうすると僕は常識の例外すぎる存在になってしまっているけれど、


 どうなるんだろうね。」



そうやって、少年は愉快そうに笑った。


めずらしく、外に出て浴びた光はとても眩しかった。










その誰からも気にもかけられていない第七王子である少年は


これらの常識を根底から破壊しつくし、


この城に、この国に、いやこの世界中を


180°いや、360°ひっくり返るような嵐を巻き起こすのだった。

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