第一章 戦争編

第2話 終わりと始まり

その日は、何もない穏やかな日だった。


もうすぐ、6歳になる少年は、城の外に出て1人で散歩していた。


その少年は、ご機嫌な足取りだった。


それは、昨日、その少年があこがれの青年に会ったからだろう。


その少年が城の周りを1周まわったくらいだった頃、突然雨が降ってきた。


だから、城の中に入ろうとした。


その時だった。


その日が穏やかな日ではなく、血濡れた日になったのは。


そして、少年を大きく変えることになったのは。



自分の目の前で、赤のしぶきが舞った。


その吹き上げるしぶきの色はその体を象徴するかのように美しかった。


相対的に、その吹き上げるしぶきを被った自分の前に平然と立っている少女は、


そのバケモノはひどく歪んで見えた。


「…○○…○○?」


その少年は、呆然としながらも自分の目の前に上がる鮮血と、


その鮮血がわからないくらいに血まみれになったまま、こちらへと必死に向かってく


るその青年を呆然と見ながら、彼の名をつぶやいた。


「……」


「…○○○○!!」


そして、その青年は…


「…ああ、よかった。これで、すべてを守れました。

これで、よかった。がはっ。後は…、ごほっ。大丈夫で…すね。

あ…とは…たの…みま…し…たよ。」


‥‥‥‥。


「うわああああああ。」


その少女はその少年の発狂する姿を見ながらも、無表情で立っていた。


その少年がその少女をにらみつけようと目を向けた時には、


すでにその少女の姿はなかった。



少女が姿を消した後も、しばらく少年は発狂していた。


突然、少年は我に返ったように、シーンと静まり返って無表情になった。


そして、歪んだ顔で笑った。


その顔は、憑き物がとれたようなすがすがしくも、悲しみで泣きそうな顔だった。




「僕は、あの人にただ生きてほしかっただけなのにな…。」




少年のつぶやいた今にも消え入りそうな声は、激しく降る雨の音にかき消された。


少年のその声を聞く者はもうすでに誰もいなかった。




しかし、少年はそれでも言葉を続けた。


「なんだかんだ、楽しかった。


 なんだかんだ、楽しいから、忘れていた。」


「2回目の人生なんだし、このままずっと楽しく生きられると思っていたのにな。

 

 ちょっとこの温かくぬるいこの世界に居すぎたかな。」



「ずっと前から、知ってたはずなのにな。」











「いつだって、世界はみんなに平等に理不尽なことを…。」






それでも、少年は進まなければならなかった。


自分の心を大きく占める者に頼まれたのだから。





しかし、それで終わるはずもなかった。


いや、そもそもこれまでが余興だった。


余興が終わり、これからこそが本当の始まりだったのだ。













その1か月後、20万人もの屍の山ができた。




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