第18話 事件の真相。気づいてはいけない真実
星界管理協会『アストラル・ギルド』。
それは数多の
主な業務は
全ての
所属する
――――など、他にも異界に関連するほとんどの仕事を一手に引き受けている。
規模は国を跨ぐほど巨大で、異界の資源売買で得た資金は莫大だ。
ここに目をつけられれば異界関連の仕事は受けられなくなる、と言われるほどである。
そんな『アストラル・ギルド』がおこなう業務のひとつに『依頼作成』というものがある。
これは個人や企業が危険な『星獣』の排除や、特定素材の確保を依頼する際に発行される。
依頼者の代理で協会が作成するもので、作られた『依頼書』は協会に所属する会員がネットを通して閲覧し、依頼を受けることができる。
ただし、依頼を受けれるのは条件をクリアした者のみ。
階級を満たしてるか、役割が当てはまるかなどである。
これが合わなければ依頼を受けることは出来ない。
そして、今回マキナが依頼されたのは【
これは個人や企業ではなく協会が重大な事態に対処するために依頼するものだ。
依頼された者は協会員として受ける義務が発生し、受けなければ罰則がある。
マキナは【
「うん、ムリ!ごめんね!」
「へ?」
受けれない。
それを聞いた協会の女性はポカンとなにを言われているのか分からなかった。
言葉の意味に理解が追いついてきて狼狽する。
「え、え、え?【
「関係ねえだろ。嬢ちゃん、そこにいるのは誰だ?さっき自分でも言ってたろ?」
「え、あ。AAA…………」
「そうだ。最高ランクで国に二十人しかいない最強の存在。都市の最終防衛戦力だ。『カテゴリー2』が複数活性化した程度で使い走りにして良い存在じゃねぇんだよ。特権でそのくらいなら拒否できる」
「じゃあ!元・Bランクのイヌズカさんに依頼を!元々、そのために私はきたんです!」
協会の女性が語るには、【
その個体が生み出す『星獣』が尽きるまで討伐し、資源を生み出す【女王】は生かす、というのが依頼内容だ。
元々イヌズカにその依頼を出すつもりだったが、本人に電話してもメッセ―ジを送っても反応なし。
仕方ないから上司に直接言って頼んで来い、と言われ目的地に到着したら危険物処理班やイヌズカの『力』でつくられた紺の絶界が展開され、理解不能。
そのあと絶界の外から懸命に呼びかけたり、そこから出てきたAAAランクでマトモ枠と噂のマキナに依頼を振って断わられたり、当初の目的に戻りイヌズカに依頼を頼んだのだが――――
「いや、俺は引退して細々と店を経営するしがない店主だぞ?受ける義務はねーよ。連絡とか全部無視した時点でこっちの意思表示に気づけ」
「そんなぁ!?」
がくっと地面に膝をついた協会の女性の顔には絶望が浮かんでいた。
「ごめんねー。万全の状態なら受けてもよかったんだけど。いまは色々とボロボロなんだよ」
「…………いえ、こちらこそ申し訳ありません。慌てすぎて失礼なことを頼みました」
「そもそもなんで引退した俺や、
「それは、【
「ん?」
重大な事態――――その言葉にマキナは心辺りがあるぞ、という顔になる。
「イヌヅカさんにもメッセージでお伝えしましたが、明言できないような都市を、世界を揺るがす大事件が起きたのです」
「ああ……メッセージが送られたときはイタズラを疑ったが、いまは信じるぞ」
イヌヅカはちらっとマキナ方を見る。
マキナは目を合わせない。
「突拍子もない情報を信じてくれてありがとうございます。――――それで、その事態を終息させるために力がある稀人たちが総動員されてしまって、ほかに手が回らないのです」
「それは大変だ」
ことの発端になったマキナはダラダラと汗を流す。
「ええ、大変です。しかもこれは綿密に計画して実行した強大な組織が存在すると思われます」
「なに?」「ん?」
事情を知ってる二人が疑問の声をあげる。
計画?組織?なにそれ、と。
「その根拠としましては、幾重のセキュリティとダミーで隠していた極秘の場所を発見されたこと。年に四度ある警備ドローンのメンテナンス日を狙われ、監視の目が薄くなった隙に犯行が行われたこと」
さらに、と続ける。
「その
「えっと、すごい偶然が重なった可能性とかない?」
予想以上にことが大きくなっているぞ、と感じたマキナは
「ありえません。これらすべてが偶然でおこったなんてありえません。どんな確率ですか?計画されたと考えるほうが現実的です」
「ソウダネー」
偶然も奇跡もあるんだよ、と口には出せない。
「しかも、現場では煙幕による襲撃がおきました。怪我人はでませんでしたが、これは襲撃者の存在をあらわすもので目的は――――不明です。なにがやりたかったのか…………」
「ワカンナイネー」
逃走用です。これはいよいよバレたらまずいぞ、という顔になる。
「その襲撃のせいでさらに人員が投入されることになって…………本当に人手が足りないんです。引退したイヌヅカさんやAAAランクのマサキ様に頼らなければいけないほど…………迷惑をおかけして申し訳ありません」
「ううん。気にしないで。本当に。まじでごめんなさい」
「?」
突然の謝罪に疑問符を浮かべる協会の女性。
ずっとジト目でマキナを見るイヌヅカ。
「そういえばAAAランクの方はほぼ全員が現地に入ってますが、マサキ様は一体いままでなにを――――」
「そこまで困ってるのに助けないのは人道にもとるよねッ!!その【
「ほ、ほんとうですか!?!?」
救世主を見る目で女性はマキナを見る。
なお、その救世主さまは気づいてはいけない疑問を封殺しようとしただけだ。
「いや、てめえはボロボロなんだろ?ご自慢の人形もねえ。そんな状態でどうすんだよ?」
「カテゴリー2くらいなら今の状態でも楽勝!それに――――」
「それに?」
遠くから弾むような足取りで巨大なクレープを持った褐色少女がやってきた。
「マキナ、マキナ!すごいですよ!一番いいのを頼むです!とお願いしたら、こんな大きいクレープを作ってくれたのです!これは挑戦のし甲斐があるですよ!」
マキナ用の通常クレープと、頭が隠れそうなほど大きなクレープを持ったアスラが嬉しそうに報告してきた。
そんなアスラを微笑ましそうにマキナは見て――――告げる。
「アスラの協会資格取得と階級決めにちょうどいい場所でしょ?」
アスラはキョトンとしていた。
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