「便所っ子」
他の方の「怖そうで怖くない少し怖いカクヨム百物語」を読ませていただいていたら、学校のトイレの話があり、
「そういやそういう話もあったな」
と、思い出しました。
小学校の時、1年生の教室は給食室とくっついて細長く並んだ校舎にある教室でした。教室は2階で、1階に給食室と、何か他にも色々な部屋。もしかしたら校長室とか職員室もあったかも知れません。そのあたりはよく覚えていませんが、とにかく教室は1階、端っこの給食室からは毎日調理の匂いがしてくるものの、偏食のかたまりで給食が憂鬱な私にはその匂いすら楽しくないものとなっていました。
その古い校舎の1階には、やはり古い古いトイレがありました。古いトイレで一応水洗ではあるんですが、その形がやっぱり古い。2階には普通のと言っていいのかどうか分かりませんが、今でもある形のトイレがあったと思うんですが、なぜか1階はそのトイレでした。なんとなく公園とかの公衆トイレみたいな感じです。
トイレには個室がいくつかあり、ずらっとならんで別々に区切ってあるけど和式の便器の下はすっとんとんでつながった一つの部屋です。1年生のトイレだからか、男女分かれてなくて小便器が個室と反対側の壁についていました。男女どっちも同じ広いトイレに入ってそれぞれ用を足すという感じかな。
そうそう、思い出したんですが、ドラマの「VIVANT」で追われた主人公たちが、警察犬の嗅覚から逃げるために同じような形のトイレに飛び込んで隠れ、最後には汚物を自分に塗りつけて難を逃れてたんですが、ちょうどあんな形のトイレです。
出したものは下に落ちて、時間になるとざあっと水が流れてきて全体を洗い流します。個々に流すのではなく、そんな形の「一応水洗」という感じでした。定期的に水が「ざーっ」と流れる音がしていました。
だから、もしも下に落ちたらえらいことです。落ちないようにと注意をされてましたし、もちろんみんな落ちるつもりもない。
そのトイレに不思議な話がありました。
「あのトイレの何番目かに便所っ子という妖怪がいる」
有名なトイレの妖怪では「トイレの花子さん」という方がいて、ハリー・ポッターの寮のトイレには「嘆きのマートル」という幽霊がでます。それと同じようなシリーズですが、この話をすると大抵の人はその名前にプッと笑いますね。
「便所っ子」
なんでそんな名前なんだか。そう思っても、私が知った頃にはもうすでにその名前が固定でしたので、いつ誰がつけたのかも分かりません。
トイレと言っても上に書いたようにかなりオープンな形なので、人の出入りも多くてそういう意味では特に怖いということもありませんでした。みんな落ちる方がよっぽど怖かったんじゃないかな。
ですが、そのトイレである時騒ぎがあったんです。
私はその時もう2年生か3年生で、そのトイレのある校舎からは卒業していたんですが、事件が起こったのが「春の小運動会」の時だったので、知ることになりました。
うちの小学校では春の平日に「小運動会」といって、特にリハーサルもしないし、父兄を招待もしないような文字通り小さな運動会がありました。父兄は来たかったら来れたのか、生徒だけでやってたのかはもう覚えてませんが「小運動会」という名前だけは覚えています。
秋の日曜日には父兄が見に来る「大運動会」があり、こちらは練習とかする一般的な運動会でした。
その「小運動会」の日、そのトイレに、
「便所っ子が出たぞー!」
と、子どもたちが大騒ぎ!
もちろん、野次馬の権化のような私も走って見に行ったんですが、私が行った時にはもう先生がそこにいて、
「何もないから帰りなさい」
と、生徒たちを追い返していました。
私は追い返されるまでにもいかず、途中から戻ったんですが、
「便所っ子見た!」
と興奮してる子もいたので、何かがあったのは確かなようです。
一体何があってどうなったのかは分かりませんが、
「春の小運動会の時に便所っ子騒ぎがあった」
というのは本当のことです。
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