起こしてくれたおばあさん
前回で「打ち止めです」と書いたんですが、思わぬこととなりました。
理由は夢を見たから。昨夜、ちょっとした夢を見て、
「あ、そういやこれも書こうかなと考えてやめたんだった、書いてほしいってことかな?」
そんなメッセージが伝わってきたように思ったので、書くことにします。
それは私が大学生の時、友人Iの家での出来事です。
Iは高校に入った時に同じクラスになり、それ以来数人のグループでよく遊ぶようになったんですが、今でも一緒に遊んだり連絡を取り合う貴重な古い友人の一人です。
Iは5人家族でした。両親とIと妹と、そしておばあちゃん。確かお父さんのお母さんだと思います。
ですが、大学の頃、お父さんとおばあちゃんが相次いで亡くなりました。お父さんは確か2年の時。この時は私も友人といっしょにお通夜か葬儀に参列したんですが、その後のおばあちゃんの時は家族で静かに見送ったらしく、話を聞いただけでした。
他の友人の家にも遊びに行ったりしてたんですが、なぜかIの家には何度も泊まりに行っています。Iもうちに泊まることがありましたが、私が泊まりに行った回数の方がはるかに多いと思います。
高校の時からすでに遊びに行ってたんですが、お父さんには2回ほどお会いしたかなあ。もちろん仕事でいらっしゃらなかったこともあるんでしょうが、その後病気をされたことから、入院されてることも多かったです。
おばあちゃんは行くといつもいらっしゃったんですが、その時にはすでに認知症であまり物事がよく分からない感じ。行くとおばあちゃんにも「こんにちは」と挨拶をしてあちらも返してくれるんですが、家族以外には何を言ってるのか言葉もよく聞き取れない感じでした。
それでもニコニコして何か言ってくれて、私を親戚の人と間違えたり、ある時はなんでか見て喜んで泣いてくれたり。なかなか味のある対応をしてくれてました。
Iの家がお母さんと妹の3人暮らしになって割とすぐの頃、おばあちゃんが亡くなってまだ四十九日を迎えない頃でしたが、私はまた泊まりに行ってました。
ただ、翌日の2時限目にどうしても受けないといけない授業があり、翌日は一度I家から大学へ行って、戻ってまた遊ぶなんてことを計画していたようです。
前日、いつものようにIとなんだかんだ夜ふかしして、当時はまだお酒が飲めたので少し飲んだりもして、翌日は予定通り寝坊です。大学生なんてそんなもんですよね、なんて言ったら世間の大学生に怒られるかも知れませんが、とにかく二人してぐうぐう寝てました。
Iの妹も確かもう大学生で、もしかしたら真面目に学校に行っていたのかも知れませんが、その朝はいなかったと思います。お母さんは朝から仕事に行ってました。
そんな中、どうしようもない大学生が2匹、夜ふかしというか朝方まで遊んでぐだぐだに寝坊。ほんとうにダメダメですよね。
「この時間から授業だから、このぐらいに起きて行ってくるわ」
そう言ってたんですがその時間にもちろん起きられませんでした。どうしても受けないといけない授業なので、遊んでる途中抜けをして行くことにしたんですが、起きられない。そのまま寝てたら遅刻をしたことでしょう。ですが、そんな私を誰かが起こしてくれたんです。
その起こし方がものすごく荒かった。両肩を持って思いっきり前後に揺さぶられた!
「な、なに!」
思わず飛び起きるほど荒っぽい起こし方。びっくりして飛び起き、横を見たらIがぐうぐう寝ている。
「おのれIめ、人を起こすだけ起こして自分は寝てやがるな」
ぐらいの気持ちでしたが、時間もぎりぎりなのですぐに身支度をしてバイクで大学までぶっ飛ばしていきました。おかげでちゃんと授業を受けられた。
授業が終わってI宅に戻ったのはもうお昼でした。
帰ったIが、
「ちゃんと学校行ったんや、起きたらおらへんからどうしたんかと思った」
と言うのです。
「いや、起こしてくれたやん。おかげで間に合うたわ」
と言ったら、Iは起こしてないと言うんです。
「今、自分が帰って来るちょっと前まで寝てたから知らんよ」
って、ええっ!
「いや、揺さぶって起こしてくれたやん」
「いや、知らん」
どうなってるんだと考えていて、
「そういえばおかしい」
と気がつきました。
あの時、私は上を向いて寝てたと思います。上を向いてる体を前後に激しく揺さぶられ、首ががくんがくんとなって、それでびっくりして目が覚めたんです。
どんな感じだったかと言いますと、立って向かい合ってる人間の肩を持って、思い切り体重をかけて前後に揺さぶったら、あんな感じになるかも知れない。
でも、寝てる人間を、そんな風に激しく揺さぶることができる?
もしもIが私よりかなり大きな人間なら、もしかしたら可能かも知れません。大人と子どもみたいに大きさが違ったら。ですが、Iは身長こそ私より少し高いけど、横幅は私の方が広いぐらい。トータルすると肉体としての容量は同じようなものだと思います。おまけに特に運動とかもしてないので、筋力が飛び抜けてあるという人間でもない。
「どういうこと……」
そんなことを話していたらお母さんが帰ってきました。それでその話をしたら、あっけらかんとこう言われたんです。
「ああ、それおばあちゃんやわ、私もよう起こしてもらうよ」
って、なんですとー!
しかも、
「ようその椅子に座ってるよ」
と、その時私が座ってた席を見てそう言うんですから、そりゃもうびびったのなんの。
ですがおばあちゃんのこともよく知っていましたし、全然怖いという体験ではなかったので、そうだったのかも知れないなで終わりました。
おかあさんによると、その後、
「四十九日が終わるぐらいまではよく見かけたが、その後は見えなくなった」
そうです。
昨夜、私は地震が起きる夢を見て、その中で地震の揺れ方が実際に自分が体験した地震とは違い、他のどこかで体験したような揺れ方だなと考えていて、あの時と同じ揺さぶられ方だったと思い出しました。
お盆だし、一度は書こうかなと思って「10本になったしここまでにしておくか」と思ってやめたことで、書いて欲しいと言ってきたのかも知れませんね。
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