歌う縄文人

 前回は妹と一緒に経験した怖い話というか、実際は私は妹が怖がっていた何かを怒鳴りつけて追い出しただけなので、そんなもん全然怖くなくて、ただひたすら翌日の母の手術の結果の方が怖かったわけですが、もう一つ妹と一緒に、今度は私も経験した怖い出来事について話したいと思います。


 実は、この話ももう長い間したことがなかったんです。それが前回の話をしようとした時にそのことも思い出したように2人で話すことになりました。

 それは確か私が小学校6年生、妹が5年生の時の出来事です。


 当時、私と妹とそれから母は宝塚歌劇を毎月のように、全公演の演目を見に行ってました。

 実は母の父である祖父が、ちょっと阪急と関係のある仕事だったもので、うちの母方の一族は男女関係なく宝塚歌劇が好きなんです。私も小学校から高校まで、毎公演1回以上観に行ってました。

 妹と2人の時もあれば母と3人、それから伯母も一緒だったこともありますし、いとこや友人と一緒のことも。とにかく今も舞台とか好きですが、当時は宝塚に何年かずっと夢中でした。


 当時はまだ「宝塚ファミリーランド」があり、大劇場に行くのにも遊園地に入園してから見に行く形だったんです。そしてチケットは取ってくれる方の関係で当日行って交換してもらいます。なので早めに行くことが多かった。

 時には歌劇団のスターさんの「入り」を待ってサインをもらったり、遊園地で乗り物に乗ったり色々してたんですが、交代である「催し」を見ることもありました。

 たとえば「恐竜展」とかみたいな感じ。今だったらアニメのなんとか特集とかを一ヶ月ぐらい特設会場でやるみたいなものです。遊園地の入園料を払って入るので、多分子どもは数百円で見られたんじゃないのかな。


 ある時そんなのの「人類の歴史」みたいなのを妹と2人で見に入ることになりました。母は外で待ってるというのでチケットを買って2人で中へ。


 入ったのはいいんですが、なぜかその時、そこに入ったのは私と妹の2人だけでした。会場内を進んでいくんですが、どこまで歩いても誰もいない。


 これ、かなり怖いですよ。広い催し物会場の中、薄暗くてだーれもいなくて、そこを小学生が2人きりで歩いていく。

 

 怖い怖いと思いながら、もう展示なんて見ている余裕なんてありません。そしてある会場へ入った途端、その恐怖はピークになりました。


 そこは確か「縄文人ゾーン」です。説明の音声と音楽が流れる中、動く縄文人が「なた」か何かをひたすら振っているんです。


 もちろん単なる機械仕掛けの人形なんですが、その縄文人が今にもこちらに襲ってきそう。


「うわああああああ!」


 私と妹は手をつなぎ、必死で会場の中を出口まで急ぎました。やっと外の明るさが見えて来た時にどれほどホッとしたことか。


 この話は妹もいっしょになってしてくれて、


「あれは怖かった。まるで笑い飯のネタみたいな」


 と言ったので、


「そうそう、私もそう思ってた!」


 と、2人で思い切りうなずくことになったんです。


 「笑い飯」のネタに「奈良県立民俗博物館」というのがあるんですが、そこで交代で昔の人間が座って「ばばばーばばーばばばーばばー」と動く人形の真似をするんですがまさにあれ! どちらも相手に「これ似てない?」という話をすることもなく、「あの時のあれや!」と思っていたんですが、それほどそのままあの状態だった。テレビで見た時、面白いと笑いながら、あの時のことを思い出して怖かったなあ。


 あれからまた今度は他の人も一緒の時にその話になったんですが、聞いてる人たちは笑うけど、私と妹は本当に必死だったんです。いや、今思い出しても怖い!


 さて、今回でこのシリーズも10本目。「【公式自主企画】怖そうで怖くない少し怖いカクヨム百物語」の十分の一の本数になりましたので、これで打ち止めとさせていただきます。


ちょーん!

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