第3話

燃える


炎が体を包む


息ができない


熱い


体が熱い、焼け死んでしまう!


とてつもない熱を体に感じるが、

体の自由は効かず、意識が遠のいて行く。


こんなことって、こんなところ…で…


炎にもがいていた英の体は立ったままぴくりとも動かなくなった。


英を撃とうと構えていた“人”は、人間が突然、燃え上がるという、非現実的な出来事に動揺していた。


事象の原因を掴まなければ。

情報を得るために最大速度で解析を行った。

“人”は未確定な要素に弱い、理解を超えるということを、理解できないのだ。


しかし、何度も繰り返し行われる生態スキャンの結果は、事態をより難解にしている。


スキャン1回目結果

問題なし、多少の興奮が見られるため、注意する。


スキャン2回目結果

問題なし、多少の興奮が見られるため、注意する。


スキャン3回目結果

問題なし、多少の興奮が見られるため、注意する。


なにもないところから現れた炎に焼かれ、とてつもない熱を放っている少年のスキャン結果は、特に変わったこともない、ただの旧人間だと出ていた。


さらに、調べれば調べるほどに、認識のバグが発生すると判断した“人”は助けを求めた。


スキャンデータは随時、他の“人”とも共有され、当該端末で処理が出来ない場合は、

判断能力の高い別個体に解析を依頼できる。


旧人間の管理担当最高責任官、旧人間からは『B0』と呼ばれる“人”はこの事態を重く見たようだ。


「当該の生命体は、旧人間保管居住区内に登録のない人間である。暫定的に対象をU-1とし、これの排除を許可します。当該端末は警戒レベルを最大に上げ、制圧兵器を使用し、速やかに排除を実行されることを望みます。」


「了解しました。実行します。」


その場にいた“人”が身体に装備されている

兵器の照準を、まだ微かに炎の煙の残る英の体に向けた。


その瞬間、とんでもない雄叫びが静寂を切り裂いた。


「はぁああじぃめぇええええええ!!!!」


「かぁぁあらああたぁあああけぇえじゃあああ!!!」


突然の雄叫び、次の瞬間、ものすごい速度で英に向かって何かが飛んできた。


英はカッっと目を見開いてその物を片手で受け止めた。


受け止めた物から何かが飛び出して道路の向かいの街路樹に突き刺さった。刀の鞘だ。


顔の高さに突き出した英の手には、

日本刀が握られていた。


「はじめぇえ!!強く投げすぎじゃあ!!鞘がすっぽ抜けてしもうたがなぁ!!」


様子を見ていた“人”は明確に「武器」を手にした人間に対して、瞬時に攻撃を開始した。1秒の間に6発の弾丸が発射された。


それを見るや否や、英は刀を振り回しながら“人”に向かっていった。


「唐竹!!山月!!」


雄叫びと共に銃弾が全て叩き落とされる


「十五夜!!」


目にも止まらぬ速さで“人”に近づき、銃を構える腕を、円を書いた切先が叩っ切った。


「宵!有明!!」


勢いよく振り下ろされた刀で、“人”は頭から股下まで二つに別れた。


「天から落ちる月光り!赤く燃やすは、

ワシの炎ぉおおお!!」


「天灰の赤星!ここに!!」


そう叫ぶ男の姿はどこをどう見ても

少年、英では無く。

大柄で筋肉質の良い体を持った、

端正な顔立ちの侍だった。




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AIとはなんぞやッ @tairou

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