第47話 放課後の2人 その1
「あ、あの!」
放課後、授業が終わり生徒達が一斉に帰る中、俺はその波に巻き込まれないように、すこしタイミングをずらして教室を出た。
2年の教室を出て、部室への道の途中、俺は聞き慣れた声色の人物に、後ろから声をかけられて振り向く。
「佐伯...?どうしたんだ?」
「頼水先輩、ちょっと話が...。」
やけに悪びれる表情で、話しかけてきた佐伯に、多少動揺しながらも、彼女が話し出すのを待つ。
「あ、あの。」
「ん?」
「兄から...その頼水先輩のことを聞かれて、つい話しちゃったんですけど...大丈夫でしたよね?」
「え?」
な、何?!
クソッ!
やっぱりアイツ、あの時、納得してなかったんだな?
まぁ、話題を提供してしまった俺が一番悪いんだが。
「ど、どんな事?」
「えーと、私が頼水先輩の後輩だった事と、澪ちゃんと友達だ、って事ですかね?」
「他には?!」
クソッ!
あのイタすぎるセリフを...行動を佐伯に知られてしまっては、一生擦られ続けるに決まっている。
「え、えーと。他にはないですけど...?」
え?本当?
信じるよ?
信じて良いよね?
「あ、そ、そう。あー別に全然大丈夫。」
「そうですか?!良かったです!あ、後、バカ兄がお世話になります!」
「お、おぅ。」
「それじゃ、私は部活があるので!あ、時間が空いたらお助け部に顔を出しても良いですか?」
「ん?おぅ!」
「ありがとうございます!」
テンション高めに、2階から陸上部の部室に行くのか、階段をダッシュで降りていく佐伯を見送りながら、俺も部室へと向かう。
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「ん?今日はあの2人休み?」
「あー、そうそう。莉奈の所と佐伯君の所で急にお食事会になったらしくてね。先に帰ったわよ。あっ、佐伯君が頼水君にも言っておいてって言ってたわ。」
「あ、そう?了解。」
何だ。
この雰囲気。
たった2.3日、アイツらが居て賑やかだったが、こうしていきなり2人になると、なんだかあれだな...。
緊張というか、何というか。
「何よ?」
「え?」
「今さっきから、何よ。ジロジロ見て。」
「え?別に見てないんだが。」
「そう?それよりも...!」
俺が、今コイツをずっと見ていた?
有り得ない!
え?有り得ないよね??
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