第45話 頭がおかしい奴ら


「ではでは...文化祭の出し物を決めたいと思いまーす!」


「イェーイ!」


「「...。」」


都治巳杏里が黒板の前に立って、チョークをぶらぶらと振り回しながら、俺たち部員メンバー3人に投げかける。


「ちょっと、男子2人!テンション上げなさい!!」


「「イ...イェーイ...。」」


俺と佐伯は、女子2人とは反対に力無い声で、都治巳杏里の声に応える。

何故こんなにも俺たち男子と女子とで、テンションの差があるのかというと...。


「では、まずは1つ目!メイド喫茶ー!」


「イェーイ!!」


「2つ目!文化祭限定アイドルー!」


「えー、それは恥ずくない?」


「そう?」


「じゃあ、3つ目ー!」


「おいおい!ちょっと待ってくれ!」


「何よ?」


この暴挙を止めなければ...。

そう思い、俺は声をあげる。


「これ、男子の事って、考えておられますか?!」


「え?んー、男子は、執事の格好とか、キラキラの衣装着とけば、メイド喫茶もアイドルもできるじゃない。」


「いやいやいや!ちょっと、どころか大分嫌なんですけど?この出し物!!」


「えー、良いよね?莉奈?」


「うん、楽しそー!」


「佐伯君は?」


「うん、楽しそー!」


「おい、佐伯...お前!頭が...!」


「うん、楽しそー!」


コイツ...バグってやがる。

まさか、今日の昼飯の時に話した、佐伯妹の件について考えすぎて頭がショートしてしまったのか?!


「おい、しっかりしろ佐伯!お前...このまんまじゃ、楽しい文化祭が、黒歴史量産祭になっちまうぞ!」


「ハッ?!ココハドコダ?」


「お前...。」


「はぁ...。何してんのよ、アンタ達。」


「ちょっと、裕一?!アンタ、そんなバカみたいな顔してた?!」


「リナ...ゴメン。オレガワルカッタ。」


何言ってんだコイツ...。

もう嫌だ。

コイツら全員頭がおかしいぞ。


都治巳杏里が呆れる位なのだから、相当なんじゃないか、この2人。


「とりあえず、落ち着きなさい、アンタ達!」


トントンッと、チョークを黒板にリズム良く叩きつけ、焦りをみせる都治巳杏里。


...いや、何でお前が落ち着いてないの?!

お前が落ち着けよ。


「ちょっと、裕一!!元に戻って裕一!」


「アッ、アッ、ゴメンリナ...プリンタベテゴメン。」


「良いわよ...それくらい許してあげるから、戻ってきて!裕一!」


いや、お前らはお前らで、プリン如きで喧嘩してたのかよ?!


「はぁ...。ちょっとトイレ。」


逃げよう。

今日はこのままバックれよう。


うん。

俺は悪くない。

悪いのは頭のおかしいアイツらだ。


部室に、登校バッグを忘れたのに気付いたのは、男子トイレで、下のチャックを開けた数秒後だった。

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