第44話 妹さんですか?


「佐伯...お前の妹の名前って、佐伯幸って言う名前じゃないよね?」


昼休み、学校の食堂でカツカレーを食べる佐伯と、うどんを食べる俺...2人で向き合いながら昼ごはんを食っている時、俺がふと投げかける。


一応、俺も知りませんけど、もしかしたら...風に聞いてみる。


「んぉ?そうだけど...てか、いきなりどしたよ?」


コイツのこの反応...多分、コイツも自分の妹が俺の後輩だということを知らないのだろう。

俺の恥ずかしいエピソードが、コイツにバレていない事に少し安堵する。


このまま、俺と佐伯幸の関係をコイツに知られたら、後々面倒くさくなりそうだが...。

正直、俺から口火を切った話題だ、どう収集をつければ良いのか、全くといって分からない。


「あー、そっか、そっか。いや?何でもないんだけどさ?うん。」


「いや、その反応、なんかある時のやつじゃねーか。」


「...うーん?いや、あれだよ。この前ちょっとそういう情報筋から、聞いただけでな?」


「いや、何、お前...。裏社会でも牛耳ってるわけ?」


「ば、馬鹿野郎...。何でわかったんだよ...それを知られたからには、お前を消さなくちゃいけなくなるんだが?」


「やめろ...中二病野郎が...。」


よし、何とか切り抜けたぞ。

俺って、もしかして天才だったりする?


「それで、何で幸の話になるんだ?」


「え?」


うん。

俺はどうやらイタい勘違い野郎だったらしい。


コイツなら、さっきのやり取りで切り抜けられると思ったんだが、俺が思っていたよりも単純ではなかった...。


「んー?だから、あれだよ...。この前、依頼をしに部活に来てな?」


「...?アイツが...?」


「おぅ...。」


「へーマジか。どんな依頼?」


もうこれ以上は言い逃れはできないだろう。


「山のボランティア?」


「山...?あぁ。ばあちゃんの所か?」


「ばあちゃんの所?」


「あぁ。俺ん所のばあちゃん、何か別荘を買うのが趣味とか何とかでな、そん中の1つで...何だったっけなー。あれ、何か登山者の宿泊所?とかしてるって言ってたから、それかな、って思ってよ。」


「え?何それ。初耳なんですけど。」


「まっ、俺も良くは分かんないから、帰ったら幸に聞いてみるわ。」


マズイ。

なるべくあの日の事は掘り返したくないんだが...佐伯幸の方がコイツにそこまで深くコイツに話すとは思えないが、何となく恥ずかしい。


「いや、大丈夫だ!」


「ん?何で?」


「大丈夫なもんは、大丈夫だから!」


「お、おぅ。わかった。」


勢いで乗り切ったが...本当に大丈夫だろうか?


話しに夢中になっていて、手をつけていなかったうどんに箸をつけ口へと運ぶ。


「おっ、ふ...。」


思っていたよりも熱かった...。

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