第40話 2人の入部希望者


「おい、頼水!」


「ん?いきなり何だよ?」


時計の針が12時40分を差した頃、授業が5分前に終わった俺と佐伯は、今日は食堂には寄らず、お助け部の部室へと足を運んでいた。


佐伯は橘さんに弁当を作ってもらったらしく、俺は澪と母さんに弁当を作ってもらったため、わざわざ人の多い食堂ではなく、この部室でご飯を食べる事になった。


「俺も、この部活入っていい?」


「は?いきなり何だ?」


「いや、なんかさ...俺が入ってた部活が廃部になっちゃってさー。」


ん?待てよ?

なんか、これと似た話を昨日も聞いたよな?


「...お前の入ってた部活って何だったっけ?」


「ん?オカルト研究捜索部だけど?」


「何だよ...その部活...。」


ん?何かこんな語呂の部活名を聞いたぞ。


「まっ、俺は幽霊部員だったからな。内容は知らん....。」


「幽霊部員...おい待て...。お前それ橘さんと一緒に入ってた部活だろ?」


「お?何でお前が知ってんだ?俺言ったっけか?」


「いや、昨日聞いた。都治巳杏里から。」


「ほーん。まっ、そうそう。莉奈と一緒に入っていたんだけど、いきなり廃部だなんだってなってさ、入る部活がなくなったってワケ。だから、お前の部活入れてくんね?」


「え、いやだ。」


「うぇー、何でだよー!」


「だって、橘さんも入るって言ってるし、お前も入れたら、お前ら2人でイチャつきだすじゃん。」


「大丈夫だって!だって、最近あんまり莉奈と上手くいってないからな!」


「いや、お前それ、そんなに堂々と言えることじゃないけどな?」


「まぁな...。だから、お前の部活に入れてくれれば、流れで仲直りできるかも知れないだろ?」


「お前...そう簡単にはいかないと思うぞ?」


「まぁ、いーんだって。お前の部、何か楽しそうだし。」


「楽しい...?」


コイツ...この部が楽しいと言ったのか?

ならば、それはとんだ勘違いである。


「ん?どした?何、固まってんだよ。」


「馬鹿野郎、お前...この部活での男の立ち位置なんてノミの同じなんだぞ?!」


「おぉ、いきなりどうした?」


「クソッ、俺が何回この部で活動した事によって、女子から嫌われてきたか...マジで半端ないからな?!」


「おぉ...お前...苦労してんだな?」


「馬鹿野郎、お前...ネタだと思ってんだろ?」


「え?ネタじゃねーの?てか、心配しなくても大丈夫だって!もしかしたら、俺が入る事で、お前の苦労も軽減できちゃうかもよ?」


「...ん?それもそうだな?」


橘さんと都治巳杏里、2人がいる中で俺が1人でいれば、まるでハイエナ2匹に囲まれた草食動物と同じではないか。


ならば、佐伯を入れて、標的を2つにしてしまえば、いくらかマシになる...はずだ!


「よし、入部許可!放課後、入部届け持ってこい!」


「おぉ...何かやけにテンション高いな...今日のお前。」


「まぁな!」


仕事量も、コミュニケーションの量も、何もかもが半減するのだから、テンションが高くなってもしょうがない!


ふはははははは!

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