第36話 あれ...いない。
「なぁ...。」
「ん...?ちょっと待ち...なさいよ。今...食べてるん...だから。」
口をモグモグと活発に動かしながら、ハンバーグとグラタンを同時に食べる都治巳杏里。
てか、ハンバーグとグラタンって絶対合わないよね?
何でそんなに美味そうに食ってんだよ...!
「....はぁ...。やっぱり美味いわね、このお店!何でどこの店も安定して同じ味が出せてるのか、気にならない?頼水君?」
「あぁ、確かに気になるよ?気になるけど...その前に何か足りなくない?」
「え?」
「いや、え?じゃなくて...え?」
「何も足りなくないじゃない?」
「いやいやいや、足りないけどね?ポテトは?もう20分くらい経ってるのに来てないんだが...。」
「......。あ、あぁ。ポテトね?あっれ〜、頼んだはずなんだけど...てか、頼水君が頼む時何も言わなかったのが悪いんじゃないの?!」
コイツ、俺に責任転嫁してきやがった。
今までの俺だったら、ここでキレ返していただろうが、今日の俺は違う。
冷静にだ。
冷静に話し合えばコイツも分かってくれる...はずだ!
「いや、俺は加賀美さんの方を集中して見てたから、注文の時まともに聞いてなかったんだよ。」
「そう。それじゃアンタが悪いわね。注文の時にちゃんと聞いてないからこうなるのよ?」
「はぁ?俺は事前に言ってただろ?ポテト頼んでおいてって。」
「はぁ?私に期待しないでくれる?」
「はぁ...?ん?え?期待しないでくれる?って...もしかして気づいてたのか...?」
コイツ、もしかして自覚があったのか...。
自分がバカだって...。
何かそう思ったら、段々と怒りが収まってきた気がする。
何で、俺はポテト如きでこんなにイラついていたのだろうか?
「当たり前じゃない...。アンタの言葉は半分以上まともに聞いてないんだから...。」
コイツ、マジで一発ぶん殴ってやろうか??
何だ、その人を嘲笑う様なムカつく笑い方は?!
そっちがその気なら、俺も10倍にして返してやるが?!
そんな怒りを抱えながら、俺はふと清楚ギャル達のいる右側を見た。
「...おぃ!」
「んー。何よ?まだ何かあるわけ?」
「いや、あれ。見ろよ。いないぞ、あそこ!」
そう言って、俺は向かい側のファミレスを指差す。
「え?!嘘でしょ?いつのまに?!」
俺が見た時には、もう既に清楚ギャル達の席は空席になっていた。
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