第34話 修羅場、確定演出


「あの...!!」


「...?え?誰すか?」


「えーと、同じ学校の2年生なんですけど、ちょっと話があるんですけど、今大丈夫すか?」


「え?話すか...。あー、ちょっと待ってもらえます?」


そう言って、清楚ギャルの彼氏は、一緒に歩いていた友人にコソコソと数十秒ほど話をして俺の方へと戻ってきた。

雰囲気的に、ヤンキーという程でもない為、案外気軽に話しかけられた。

ギャルの彼氏=ヤンキーというのはどうやら見当違いだったらしい。


「えーと、どっか座りますか?」


「...そうすね...。じゃあ、あそこで。」


「うっす。」


俺は、今さっき座っていた椅子の方を指差す。


「あ、ちょっと待っててもらえます?」


「え?あ、はい。大丈夫すよ。先座ってても?」


「大丈夫すよ。」


「うっす。」


俺は、知っている。

こういう場面で、話し合いだけ、をする場合に置いて、そのままの流れで行くと殆ど上手くいかないと。


だが、後ろには、清楚ギャルが迫ってきている。

都治巳杏里が時間稼ぎをしてくれてはいるが、あまり時間は稼げないだろう。


なるべく早く、かつ分かりやすく伝えなければ。


------------


「あ、すんません、待たせちゃって。これどーぞ。」


「あ、あざっす。」


初めて話す相手に最低限のもてなしは必要不可欠。

だから、俺は近くの自販機に水を買いに行った。

これで、第一印象は完璧なはず。


「それで、話って?」


「あー、えーとすね。まず...俺は2年の頼水瑞樹って言います。」


「頼水...あー、お助け部の?」


え?何で俺の名前を聞いて、お助け部だって分かるんだ?!

怖っ?!

まぁ、この状況で、それを深掘りするのは、時間ロスに繋がりかねない。


「え?あぁ、そうすね。それで、君の彼女さんに、ちょっと依頼を頼まれてね?」


「あす、から?」


あす?

...あぁ。

清楚ギャルの事だろう。


「そうそう。それでさ、もう単刀直入に言っちゃうと、浮気してる?」


「え?浮気すか?!」


「あ、あぁ。」


驚いた表情をみせる彼氏に、少し動揺しながらも、ちゃんと目を見て答えを待つ。


「あー、いや。それー、勘違いじゃないすか?」


「え?勘違い?」


この目は、本当なのか、嘘なのか。

うん、全くもって分からん。


「はい。え...?あす?」


「は?」


彼氏の反応に、俺は訳もわからないまま、とりあえずその彼氏の目線の先に目を向ける。


「何やってんの?頼水先輩。」


俺の後ろで、殺気全開の清楚ギャル。

これは....。


修羅場、確定演出である。

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