第31話 尾行はお手のもの?!


「おい、あんまり出るなよ!」


「いや、アンタこそはみ出てるから!」


「ふぅ、まぁ一旦落ち着け。」


「いや、アンタがね...。」


そんな責任転嫁の権化の様な話をしながら俺と都治巳杏里は、電信柱の後ろから、清楚ギャルの彼氏、満谷雄也の尾行を行っていた。


正直、こんなことしても良いのか?という罪悪感的なものがあるが、まぁ彼女からの認証は貰っている為、これは合法的尾行なのである。


決して悪い事をしているわけではない。

うん。


「ちょっと、テキパキ動いてよ!ほら!モールの方行ったわよ!」


「いや、遅いのお前な?!」


まるで忍者の様な動きで、数メートル離れて満谷を見つめる俺達だが、忍者という設定に忠実すぎるのか、都治巳杏里の動きが本当に遅い。


まるで、人間型ナメクジである。


「ふぅ、もうこの忍者歩きみたいなのやめるぞ!」


「はぁ?始めたのアンタでしょ?!」


そういえば、この忍者歩きを先に提案したのは俺だった...。

テンパリすぎて、何が何だか分からなくなっている。


「え?入っていたわよ?!コスメのとこ!」


「な、何?!」


これは...普通ではない。

男という生き物は、1人で、女性用のコーナーに行かないのだ!


唯の偏見であるが。


「これは、50%の確率でやってるぞ!」


「いや何よ、その偏見的確率。」


「ふっ、俺が女性用コーナーには澪と意外近づかないからな!」


「そーれ、頼水君だけじゃないの?」


「まぁ、追えば分かるさ!」


「何か、やけに乗り気ね?」


「だって、こーゆーのワクワクするだろ?」


「あ、そう?」


何だこのやり取り。

いつもと逆になっている気がするんだが。


「じゃあ、私が入ってみるから、頼水君はそこらで座ってて。」


「あ、あぁ。」


「それとも、一緒に入る?」


「いや、やめとく。」


「そう?」


「あぁ。」


「じゃ、行ってくる。」


そう言って、美容、コスメというコーナーに入っていく都治巳杏里を横目に見ながら、俺は近くの休憩所の椅子に座る前に、水を2本買って周りを見渡す。


「やっぱりいるよなぁ...。」


黒の上下の服に黒のキャップ、そして黒マスク。

まるで犯罪者と疑われそうな人相をしながら美容、コスメというコーナーを見つめる少女、清楚ギャルこと加賀美さんが、俺たちの少し後ろから見守っていたのか、俺たちがさっきまで隠れていた場所にいた。


「あのー、加賀美さん?」


「ひゃいッ!」


いきなり声をかけられて驚いたのか、清楚ギャルから想像もしない声が出る。


何だこの反応は、可愛いぞ。


「あ、頼水先輩じゃないですかー?」


「あー、はいー。そうですー。」


少し間を置いて、いつも通りの口調に戻った加賀美さんは、ジト目で俺の方を見ながら口を尖らせる。


「てか、何でこんなとこいるの?」


「いやー、やっぱりー気になるじゃないですかー。」


「あー、そうだよね〜。」


絶対に清楚ギャルの事だから、付いてきていると思ったが、まさかこんな格好をしているとは。


てか、その格好をまずはやめてほしい。

隣にいると目立つのだ。

いや、1人でいても目立つが。


「てか、その格好さ...。」


「シッ!出てきました!」


俺の口を手で押さえて、都治巳杏里が入ったコーナーから、男女2人が出てきた。


満谷雄也と、謎のjk。

これは確実に、やってます。

そんな事を考えながら、ふと清楚ギャルの反応が気になり、目を向ける。


「え?嘉音?」


「え?」


驚いた表情の清楚ギャルに、俺もまた驚いた顔であの男女2人の方を見る。


え?何?知り合いなの?

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