第30話 作戦会議??
「よし、都治巳...さん。作戦会議...するか。」
俺たちは、清楚ギャルが教室から出ていった後、作戦会議と称して、お菓子食べ会を2人で開催していた。
机の真ん中に置かれているお菓子タワー。
これは、佐伯がボランティアのお礼として後日部室に持ってきたものだ。
「ていうか、頼水君...都治巳、で良いわよ?」
「え?」
いきなりどうしたのか、都治巳杏里は俺の方を微笑みながら見つめてくる。
「いや、だって、いっつも都治巳...さんって、間があるじゃない?フフッ。だから、都治巳で良いわよ?あ、それとも、杏里って呼んでもいいけど??」
「ッ。いや、都治巳って呼ばせてもらう。」
「フフッ、そう。」
俺を嘲笑う様に笑う都治巳杏里から、目線を逸らしてお菓子に手を伸ばす。
「なぁ、それで、どうするよ?浮気調査って...。」
「えー、そうねー。まずはあれでしょ...GPS。」
「いやいや、そんな本格的にはできないから...。それにまず、GPSの付け方すら分かんないぞ、俺。」
「フフッ。当然私も知らないわよ?」
「あぁ、そう...。」
コイツ...本当にバカなのか?!
「何よ、そのバカを見る様な目は?」
「んっ?!」
何?コイツ人の心が読めるのか?!
まさか、そんなラノベ主人公みたいな必殺技ができるわけないよな?
だが、用心に越した事はない。
できるだけ心を無にして話そう。
「ま、ままさか。そんな事思うわけないだろ?」
「いや、その反応、図星じゃない。」
「...ごめんなさい。」
クソッ。
コイツ、俺にカマを掛けたのか?
こう見えて意外と策士...ではないな。
目の前で、ボリボリと美味そうに醤油煎餅を食べている姿に策士などという言葉は似合いそうにない。
「まぁ、いいわよ...。ボリッ。そうねぇ、まずはあれね。ボリッ。」
「うん。とりあえず食べてから話してくれ。」
「はぁ...。」と言って数秒で、都治巳杏里はボリボリと煎餅を噛み砕く。
ネズミの咀嚼を3倍程にした速度で煎餅を食べあげて、また煎餅の袋を近くに置き、俺の方を向いて口を開く。
「はい、食べたわよ。それで、えーと、そう!とりあえずは尾行するのが1番良いんじゃない?」
「え?マジで?」
「マジよりのマジよ。まぁ、大前提に、加賀美さんの居ない所でその女と会うって事よね?」
「そうだな?」
「じゃあ、彼女から少し彼氏と距離を置いてもらって、暇な時間...というか隙を作るのよ。そしたらその彼氏、その浮気相手に会いに行くでしょ?」
「そうだな?」
「そこを、私が木刀でパチーンッと行っちゃうわけよ!」
「いやいや、それ相手死ぬから。」
「フフッ。浮気をする男は私が殺すわ。」
マジでこの女、浮気男に対する殺意が高すぎる。
真面目に殺してしまいそうな勢いと目力が、ネタ感を完全に取っ払っている。
「あ、あぁ。殺しちゃダメだからな?」
「はぁ...殺すわけないじゃない。」
「え?そうなの?」
「全力で頭を4、5回木刀でぶん殴ってやるだけよ。」
「それを世間一般的に殺す、ってゆーんだけど。」
「まぁ、そんな事はどうでもいーから。」
いや良くないんですけど?
貴方が人殺しちゃったら、俺もそれ共犯になっちゃわない?
「とりあえず、尾行する。それで決まりね。」
「あぁ。」
もう、ここはコイツに任せよう。
変に案を挙げて失敗でもしたら、俺が殺されそうだ。
「じゃあ、加賀美さんに、連絡しとくから!あっ、私、この後用事あるから、先に帰るわね。じゃ、明日ね!頼水君!」
「あぁ。明日。」
そうやって、近くに置いた煎餅を手に持って部室を出ていく都治巳杏里を見送りながら、俺は1人、机に顔を伏せる。
「はぁ...。」
疲れた。
なんかもういろんなことが重なりすぎて疲れた。
疲労からか、目を閉じて数十秒で俺の意識は途切れた。
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