第15話 妹


「なぁ...澪、、、。」


「なに?」


学校から帰ってきて、俺は一目散に風呂に入り、部屋のベッドに寝転がった。

俺がベッドで寝ていると澪が部屋に入ってきて、俺がコレクションしている漫画を漁り、絨毯の上でゴロゴロと堪能し出した為、声をかける。


「お前、佐伯と仲良いよな?」


「え?佐伯って、さっちゃん先輩?」


「そそ。」


「良いけど...って、みず兄も知ってるじゃない。」


「まぁ、知ってんだけど。あれだ...うん。」


「なーに?ネチネチ気持悪いんだけど...。」


怪訝そうな顔で、漫画から俺に視線を移す澪。

正直、妹にこんな話をするのは何だが、あまりに気になって仕方がないのだから、しょうがない。


「はぁ...単刀直入に聞くけどさ...俺って嫌われてる?」


「へ...?ぷぷっ!」


「はぁ?何だよ...!」


2秒ほど考えた後、口を膨らませて我慢する様に笑う澪に、何故笑っているのか分からず、つい怒り気味に反応してしまう。


こっちは必死なのだ。


「いや...!ごめんっごめん!フフッ。」


「いや、え?何...その反応?もしかしてマジのやつだった?」


「んー...大丈夫。みず兄のことは、絶対に嫌ってないから。」


「何で分かるんだよ...?」


「何でも...だよ。フフッ。」


「えぇ...?」


「女の子にしか分からない事だってあるの!まぁ、あんまり気にしないで...。」


逆に気になってしまうのが俺の性なのだが。

まぁ、この澪の反応を見るに、別に嫌われている、という訳ではなさそうなので、これ以上詮索するのはやめておこう。

余り深掘りしすぎると、痛い目をみるのが俺なのだから。


「ねぇ...それよりもさ。この漫画、どういう事?地下で人造人間を作って何がしたいの?」


「いやいや、お前...そういうのは自分で考えなきゃ面白くないだろ。」


「いやいや、ウチは、先の事実を知った後にその場面まで行く過程を楽しむタイプなの。」


「え?まぁ、そういうタイプもいるのか...。」


「いやいや、ウチみたいなタイプの方が多いから。」


「え?そうなの?」


「そうそう。」


我が妹ながら、その先バレタイプの良さが余り分からないが、本人がそう言うならそれが良いんだろう。

その後もダラダラとその漫画について話し合っていると、突如ピコンッという通知音が部屋に鳴り響く。


「え?女の人?」


澪がそう言いながら丁度、漫画の近くに置いていた俺のスマホを取ろうと右手を動かすが、既所で俺がスマホを持ち上げる。


液晶には、「Anri」という名前が表記されていた。


「今の、彼女???ねぇねぇ、彼女?!」


「いや、ちが...。」


そう言う前に、澪は動揺した俺の左手からスマホを奪い取り、パスワードを開いて中身を漁る。


「え...お前...。何で、パスワード知ってんの...。」


「ん?あー、うん。って!何?山行くの?」


「いや、パスワード...。」


俺は都治巳杏里とのメッセージを覗かれたよりも、妹が俺の携帯のパスワードを知っている、という事が何よりも怖く、「何で知ってんだ。」と何度も尋ねるが、それに関して「あ、うん。」としか返してこない澪に、俺が折れた。


「いや、それあれな。佐伯がボランティア?とか何とかで、俺とその子に「一緒に行ってくれませんか。」って尋ねてきたんだよ。」


「みず兄だけならまだしも、何でこの人にも?」


「いや、この子も俺と同じ、お助け部だから。」


「え...。ふふーん!」


「何だよ。」


「いやぁ、何でも?あっ、これ私も行くから。」


「は?!」


「何?ウチが行っちゃいけない理由があるの?」


「いや、普通に考えてダメでしょ。」


「んー、じゃっ、さっちゃん先輩に聞いてくるから。じゃねー。」


さりげなくトンデモ発言をした後に、華麗に俺の部屋から去っていく澪とは正反対に、ただ部屋の中心で口を開けながら固まる俺。


嫌な予感。

いや確定付けられた嫌すぎる未来が、そこにある。

今なら止められるはずだ。

はずなのだが、我が妹はやると決めたらやる系女子だ。

俺が、何を言っても無駄だろう。


まぁ、佐伯と都治巳杏里の話は聞いてなかったが、俺と都治巳杏里、2人しか誘っていない風の話をしていたはずだから、大丈夫だろう。


-俺の記憶が間違っていなければ-だが。


「ふぁぁ。」


もうどうでも良くなった俺は、部屋の電気を消し、ベッドに寝転んで目を瞑る。


「はぁ...。」


どうやら眠れそうにない。

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