第4話 少年少女は
「裕一...。」
「莉奈...。」
何だろうか、この居た堪れない空気は。
正直、今すぐにでも帰りたい。
「ふふっ、じゃ私と頼水君は、ちょっと用事があるから。後は2人でよろしく。」
「は?」
「は?じゃないわよ。行くわよ!」
そう小さな声で耳元で囁き、都治巳杏里は俺の手を引いて教室を出る。
何が何なのかわからず、手を引かれるまま教室を出る俺はほぼ放心状態だった。
教室を出る間の4、5秒で俺の頭は状況を理解するためにフル回転する。
「あっ、これ...あれだわ。あの2人相思相愛だった的なやつだわ。」
俺の脳はそう答えを出した。
ふっ、多分、当たっているはずだ。
俺はこう見えて恋愛については、熟知しているからな。
「なに笑ってるのよ。」
「いや、ただあの2人、お似合いだなって。」
「ふーん、気づいてたんだ。」
「まぁ、都治巳、、、さんの反応を見てたら大体わね。」
「ふーん。じゃ、あの事については他言無用でお願いね。」
「あの事...?」
あの事とは、多分あの例のフラれた時の事を言っているのだろうが、俺はわざと知らないフリをする。
「覚えてないの?」
「あ、あぁ。」
別に嘲笑う為に、嘘をついている訳ではない。
ただ単に、こう発言する事で、俺は忘れていますので他言はしません、必ず。
という事を知ってもらいたいのだ。
「ほんとに?」
「あぁ。」
これで良い。
俺のスタンスはあくまで傍観位置であり、都治巳杏里の様な物語の主要人物の様な人間に、これ以上関係を持つことは、俺のスタンスに反するのだ。
「ふーん、そう。」
「...。じゃ、これで。」
「ちょっと待って。」
「...?」
「頼水君って、、、部活、入ってるでしょ?」
「...?」
質問の意味が分からず、俺は頭を捻る。
「入ってないの?」
「...いや入ってるけど。」
この俺たちの通う文利高校は、必ず部活に入らないといけない高校で、部活に入ってない生徒などゼロに近い。
まぁ、殆どが俺の様に幽霊部員化しているのだが。
だから、より一層、都治巳杏里の言っている事が分からない。
「どんな部活?」
何故だ。
何故そんな話をしてくる。
「あー、あれだな。分かりやすく言えば、お助け部。」
「...!」
何だその反応は。
都治巳杏里は、いきなりこっちをバッと向いて、目を輝かせている。
正直、、、いや言わない。
「その部活...私も入って良い?」
「はぁ?!」
本当に何を言っているのか分からず、ついオーバーリアクションをとってしまった。
「な、何よ。うるさいわね。」
「いや、だって... 都治巳、、さんは部活入ってなかったんだろ、、、でしょ?」
「いや、あの、辞めようかなって。」
「え?何で?」
「いや、察しなさいよ。」
察しなさいよ、といわれても察せる程、貴方の事知りませんが。
いや、待てよ。
確か、クラスの誰かが言ってたな。
都治巳杏里が、サッカー部のマネージャーしてるって。
確か、辻雄介がサッカー部だったから、あれか。
振られたからか。
「あぁー、そゆことね。」
「...やっぱり覚えてるじゃない。」
何?!
まさか、俺はこの女子の手のひらの上で踊らされていたのか。
「ご、ごめん。」
「まぁ、良いわ。私もあんな所で告白した私がバカだったから。」
「...。」
「まぁ、そういう事で、、、あっ、この後暇?」
「...?」
「何処か、寄って行かない?」
「...?!」
一人で新幹線の様なスピードで話を進めていく都治巳杏里に俺は、まともに反応できないでいた。
「用事、あった?」
何だ、今まで都治巳杏里の悪魔的恐怖によりドキドキしていた俺の心臓が、今では別の意味でドキドキしている。
「ねぇ...。」
やばい、顔まで熱くなってきた。
何だ、何なんだ今日は。
「あぁ。空いてる。」
「よし、じゃあ行くわよ。」
そう前を歩き出す俺よりも数十センチ低い彼女、そんな彼女から俺は目を離す事ができなかった。
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