第3話 蹂躙

「このクソッッタレどもがああああ!!!!!!」


 その叫び声に二体のオークは一瞬後退りした。一体のオークは痛みに悶えながらもその青年を睨んでいる。


「てめぇら・・・自分がしようとしてたことわかってんのかぁ?酒飲んだジジイの吐瀉物みてぇな肌の色してるお前らがよぉ、危うく一人の少女の人生を奪うところだったんだぞ!!」


 青年の両目から涙が流れる。


「それをてめぇらわかってんのかって聞いてんだよ!!!」


 二体のオークは已然として青年に圧倒されている。だが、


「グ……グオオオオオ!!!」


 先程から痛みに悶えていたオークが青年に向かって雄叫びをあげる。それに感化されたのか、二体のオークから恐怖心が取り除かれたかのように、青年に向かって歩き出す。


「「グオオオオオ!!!」」


 二体のオークは青年に雄叫びをあげた。先に動いたのはオーク。二体同時に青年に向かって突進し、手に持った棍棒を振り下ろす。棍棒は的確に青年の頭を捉えた。


バン!


 しかし、棍棒が当たった先は青年の頭ではなく地面だった。正確には棍棒の先が失くなっており、青年の頭に届かなかったのだ。困惑したオークは一瞬動きを止める。だが、


ズバン!!


 青年はいつの間にか二体のオークの背後に移動していた。次の瞬間、オークの体から頭が取れた。オークの頭はそのまま地面に転がる。青年の薙刀にはオークの血が付いている。


「…確かによぉ。仲間あんなんにされて切れるなって方がどうかしてる。当然復讐もしたくなるよ…けどなぁ、それとされるってのはまた別問題なんだよ!!!」


 一瞬冷静になったと思ったら、表情は再び鬼の形相に戻る。そしてその怒りの矛先は、残された一体のオークに向けられていた。


「グゥゥゥ…」


 オークは視線を青年に向けながら、左手で下腹部を抑え、右手で手から落ちた棍棒を拾おうとする。だが、その右手は棍棒に届く前に肘から離れてしまった。


「グオオアアアアアアアアアア!!」

「なに武器持って抵抗しようとしてんだ。抵抗してももう意味ないことぐらいわからないか?」


 オークは痛みに耐えられずその場に蹲る。青年はそのオークの背中に薙刀を突き刺した。オークの体から力が抜けたのがわかる。一部始終をみていた少女はハッと気づいたように青年に話しかける。


「あ、あの。助けてくれてありが…」

「まだだ」

「え?」


 予想外の返答に、彼女は唖然とする。


「まだ足りない」


 そう叫んだ後、青年は薙刀を引き抜き、腰から下げていたポーチから瓶を一本取り出した。中には空色のきれいな液体が並々入っていた。その瓶を青年は蹲っていたオークに向かって投げつける。


パリン


 液体の中身が、瓶が割れることでオークの体に降りかかる。すると、オークの背中にあった薙刀の跡が青いモヤと共に塞がっていく。血が多く抜けたオークの体は血色を取り戻していく。


「あの色の液体…ってまさかポーション!?しかもそれって最上位のやつじゃ…」


 少女は驚きを隠せなかった。あのオーク相手に最も希少なポーションを使うなんて考えられない。だが、青年はその様子を顔色一つ変えず見つめていた。


「ちょっと!あなた何してるんですか!」

「…ああ悪い。ちょっと待ってて」


 青年はまたポーチから瓶を一本取り出す。同じ空色のポーションだった。そのポーションを少女に差し出す。


「ごめんね。まずは君から渡すべきだったね」

「あ、ありがとうございま…ってそうじゃなくて!!」


 そんな彼女の訴えは虚しく、ポーションを掛けられたオークがムクリと起き上がった。


「……グオオ?」


 オーク自身もなぜ自分が生きているのか不思議なようだ。戸惑い辺りを見渡す。


「ちょっと!なんでオークなんかにあんな代物を!!あれは一流の魔法使いでも生涯に一本できるかどうかの代物ですよ!まさかオーク相手に情が湧いたんですか?」

「・・・・・・・・・」


 青年は黙ったままオークを見つめる。するとオークはそんな青年を見るやいなや表情に怒りを宿す。そのままオークは青年に向かって飛びついてきた。


ズバババン!!


 またしても青年は飛びかかるオークの背後に一瞬で移動していた。その時、オークの体から手足が取れ、宙を舞う。そのまま四肢を断絶されたオークの体は地面に叩きつけられた。


「グオ…グオオ…」


 今度は喉まで切られており、叫ぶことすらできなかった。


「誓って、オークに情が湧いたんじゃあない。足りないんだ。君が味わった地獄には遠く及んでいない。まだこいつは苦しむ必要がある。だから」


「まだ死なれちゃ困るんだ」


 そこからの光景は地獄そのものだった。オークの体が幾度となくバラバラになっていくが、すかさず青年がポーションをなげ、元に戻す。時には体を縦に、横に真っ二つに、体中に薙刀を突き刺したりした。最終的に、オークは先の尖った木の枝に尻の穴から突き刺された状態になった。その光景を少女は直視していることができなかった。


「…さて、君?」

「は、はい。何でしょうか」

「怖がらせてごめんね。一つ聞きたいことがあって」

「聞きたいこと?」

「オークの集落ってどっちにあるかわかる?」

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