海辺のホテルにて

蘭野 裕

近づいてみるとそれは

 出窓からの見晴らしの良い、すてきなホテルに泊まりました。

 予約サイトを眺めていたら、十年前のヨーロッパに旅行を思わせるこの部屋を見つけたのです。

 しかし港が見えるのはこのホテルならでは。龍をかたどった面白い形の船もあります。

 今からしばらくこの部屋は私だけのお城!


 この部屋にはインテリアとして額装された絵が3枚、ベッドに面した壁に掛かっています。そのうち1枚に気をひかれました。

 

 おそらくもっと大きな画像の一部分を写したものでしょう。

 T字上の縞模様に、小さな人の顔が3つ、偏りなく配置されています。

 美術館で見たイコンを思い出しました。頭のみの姿で、後頭部から翼を生やしている愛らしくも不思議な天使。


 この絵に描かれた顔も、そのような天使ではないかしら……?

 と思って近づいてみると、それはなんと!

 

 生首でした! 3人とも。


 穏やかな表情に見えますが、今まさに切り口から血を滴らせています。

 いったいどのような由来があって、一見整然としていながら物騒な絵が描かれたのでしょうか?


 この日は遊び疲れていましたが、それが気になって……夜しか眠れませんでした。

 朝食もさまざまな郷土料理を美味しく頂きました。

 いつかまた泊まりに行きたいです。

 




(了)






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海辺のホテルにて 蘭野 裕 @yuu_caprice

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