第10話 二グルスの季節
本日2話目です(2/2)
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あのあと散らばった物を何とか整理して、要らない物を売りに宿を出た。
まとめたものの鞄は一つしかないので穴あき魔法鞄に再び荷物を入れた。
容量の小さな鞄と言っていたが、私のワンルームの部屋の荷物位なら余裕で入りそうな容量だ。
きっと特大の容量鞄は夢のドラゴン丸一匹入ってますよ!状態なんだろう。持っている人に是非中身を見せてもらいたい!
外に出ると一気に気温が下がる。
『さっぶ』
『寒いな』
いつもの鞄にいつものズボンとフード付きのマント?ローブ?の恰好のテオ。
この人半年以上前から同じ格好してる・・・さっき入れなおした荷物には今着ているのと同じシャツとパンツ類しかなかった。
『これ以上寒くなるんだよね?』
『ううっ。そろそろ厳しいか。』
『寒いって言ってるし。』
『持ってるには持ってるんだが。』
え?あったか?
『去年ドリフリードの粉付けられてなんか派手になった。』
ドリ?ああっ!
虹色マーブルの所々キラキラした布か。
『因みに粉は鱗粉でテカってるのが粘液だ』
デカい蝶の魔物だとか。
冬越えには色々物入りらしい。まだまだ足りないものが出て来るはずだ。
薄暗い通りを歩いて、中央広場の冒険者ギルドに来た。食堂に結構な人がいて賑やかな声が聞こえてくる。ニグラスの時期は大体2、3か月でそれを過ぎると本格的な冬が始まる。この時期の魔物は凶暴化しやすく、討伐依頼もあるにはある。それでも夏場よりは大分少ない。人が籠り始める時期だからか、殆どの魔物が冬眠に入り始め始遭遇して被害に合う確率が下がる為か。
「テオ;@*さん!」
ドワーフの座るカウンターに進んでいく途中に声を掛けられた。
ニルだ!
「ニルか。久ぶりだな。」
「まだこの町にいらっしゃったんですね!」
「鞄を頼んでてな。もう少しはいると思う。」
人間種だったはずなのに、ブンブン揺れる尻尾が見える。
「もう一度依頼一緒にお願いしたかったんですけど、もうニグルスですもんね。冬眠前で魔獣も気が立ってるから討伐は俺らには難しくて・・・」
「仕事はどうしてるんだ?」
「最近は地下道の魔獣駆除してます。スライムとかオムニですけど。後は採掘の手伝いとかですね。」
「冬眠しないやつか。町中は暖かいから湧いてくるな。」
スライムしか分からないが地下で魔物が湧いているのか?コワイ。
ニルは仕事の途中で報告に戻ったらしく、また地下道へ戻っていった。
カウンターについて屑鉄の袋をドンっと置くと、「また随分ためましたね、、」少し引き気味のドワーフがノシノシ奥へ持っていった。すぐに戻って11枚のコインと小袋を出した。
10枚超えてたのか。そしてコインになりきてなかった屑鉄が帰還した。
「余り51枚です。」
「寄付で。」
「承りました。」そう言ったドワーフは机の上に置いてある壺に袋から小銭を入れた。
『これって募金箱だったんだね。』何も入ってない花瓶かと思った。
『スラム等の運営に使わるんだろう。こちらとしても今は助かる』
中央区の貴族街を見ながら少し歩いた所にある建物に入った。3階建てのトンガリ屋根の建物だ。
「いらっしゃいませ。」
品の良さそうな男性が声をかけてきた。
「マントが欲しい。蟒蛇亭の女将に教えてもらったんだ。」
「おや、フィリアからですか。ありがとうございます。どのようなマントをお探しですか?」
それから暫く二人はあれこれ話していた。
「これはいかがでしょうか?皮はドラゴンの外皮に耐性効果のある魔石を砕いて練り込んであります。裏地には防水と防塵、浄化の魔法陣を入れてありフード端ににマスクを固定してつける事ができます。」
「浄化は強めの陣だと助かる。ドリフリードに散々な目にあったんだ。耐性の魔石は等級は?-」
とかなんとか。全く分からない話をしている。安い買い物では無いにしても、長い。
完全に日が落ちているぞテオよ。まあ元々日は出ていなかったのだが。
暇になって隙のなさそうな店主を上から下までじっくり観察する事4回目。何かが違う。更に見るもどんどん分からなくなる。
??
見間違いかな。隙のなさそうな顔してるもん・・・・な・・・・。
ブフッ!
髭の高さが違う。明らかに左が上がっている。テオは、気づいてないね。
商品に顔を近づけて魔法陣どうのこうのとつぶやいている。うんうん頷きながら左のひげが不自然な動きをしている店主。時折男性が手でファサッと髭を撫でると髭からキラァっと光りが流れる。
ナニソレ。魔法?髭に光り出す効果付与してんの??
だんだん髭を撫でる回数が増えていき突然、店主が勢いよく手を振った。
すると凄いスピードで光が壁に当たり床に落ちていった。ゑ。
ナニアレ。
「あーあ。アレはあいつが悪いよね。」
ビクッ!すぐ耳元で声がした。ふむふむと説明を聴いている中腰のテオの肩の上、左を向くと半透明なナニかがいた。
『テッ、テオ!テオ!』バシバシテオを叩くが生憎手はないので気持ちで叩く。
『何だ?もう少しだから静かに待っててくれ。腹でも空いたのか?そういえば俺も腹が減ってきたな。』
そう言うとまた商品に集中しに意識がそっちに行ってしまった。
『違うって!テオ聞いて!なんかいる!しゃべった!なんか透けてるんだけど!テオ!!!!』
だめだ。何を言っても聞こえちゃいねえ。
「おねーさん。なんでそんなところに入ってるの?」
え?っと顔を向ける。
鼻が触れ合うほどの距離で、私を覗くキレイだが無機質な目と目が合った。
それは一瞬だったのか、何時間も経っていたのか。
「オマエ。また、覗き見か」
透き通る子供のような声で話しかけて来たヒトが、低く声をダブらせて呟いた。
その瞬間、急に時間を引き延ばされたかのように瞬きも思考も出来なくなった。見てはいけない深淵を覗いた時のような、意識が何か得体の知れないモノから逸らせなくなった。
バチンっ!
と音がして私はこの世界から引きはがされた。
遠くの方で、おいっ!と言う声がうっすら聞こえた。
※宗教関係の話が出ます。読みたくない方は本日はこれにて明日以降お会いしましょう。
■
ハッ ハッ ハッ ハッ
ドッドッと心臓が大きな音を立てて動いている。
血がものすごい勢いで体を巡り、筋肉や内臓が動いて呼吸がしづらい。
体はしばらく金縛りのように動かなかったが、やっと深く呼吸ができて私は起き上がった。
着ているびしょびしょパジャマは洗濯籠行きだ。雨の中走ったみたいに髪の毛が濡れているのでシャワーをあびた。
机に座って、暖かくした日本酒の徳利を口に当ててそのまま勢いつけて喉に流し込む。
「ああ。落ち着く。」口から息が漏れる。
目に入った机の上の物体を細切れにしてからゴミ箱へ突っ込んだ。
「この手紙のせいだ。ほれ見ろ、やっぱり不幸の手紙だったし。なーにが“主は貴方と共に”だ。ふざけんなよこの疫病神!
あと少しで美味しいものもたべれるはずだったのにー!どうやって蟒蛇亭連れてってもらおうかなって考えてたのに!トー―――チ――――――!!!!!
しかもあの半透明のちっちゃい幼児あり得ん程怒ってたし・・・今戻ったらまた強制送還かな。結構体怠いのにもう一回はきつい。」
明日休みなんだけど病院行かなきゃいけないんだよなぁ。めんどくさいなほんと。
学生の頃は時間があれば海外旅行に行っていた。でも就職した年に体調が悪くなって、新入社員にもかかわらず会社を休んでしばらく入院した。あれは、本当に迷惑をかけてしまった。毎日クビにされてしまうのでは?と戦々恐々していたな。
退院してからも原因が分からないから検査に協力してほしいと言われ、未だに病院通いをしている。体は健康そのもので、お酒も飲めるし、時間取られるからもうやめてしまおうかとも思ったが、行くたびに治験費用と称してお金が振り込まれるのでお酒にお金がかかる私はなんだかんだと、月に一回いそいそと病院に行っている。
「なんで手紙に病院の事が書いてあったんだろう。エスパーか?『忘れずに病院に行くように』とか怖すぎる。病院から電話でもあったか?余計なことしおって・・・」
徳利を2瓶開けて大分酔って来た。寝よう。と気合を入れて布団に入った。
何も夢を見ることも無く朝が来た。
「あれ・・・。」
物足りなさを感じながら起き上がって身支度を済ませ、家を出る。
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次回は明日
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