第4話

「ゴブリンの村に突入した時、ゴブリンメイジが魔法を使ってきたんだ。俺は咄嗟にそれを打ち返したが、肝が冷えたな。やはり人の敵として創造された生物は迫力が違う。最近はゴブリン狩りばっかりしてるな」

「ふおー! ゴブリン!」

「伝説の魔物を退治したんですの!?」


 ラスバの解体をしながらの冒険譚は延々と続く。

 魔法やスキルも駆使して、もはやプロを超えた神の使徒の腕前である。


 魔石を取って、妹のラスクに投げ渡すと、ラスクは目を輝かせた。

 弟のラスダはブンブン角を振って喜んでいる。気分はドラゴンを退治する勇者である。





「神に愛されし私は、神に開拓を願われたので国には帰れないのです。私をプロトタイプとした新たなる種族、エルフを導く崇高な使命があるので。あるので! 先日、エルフの少年も保護したんですよ。おいで、シルキ」

「はい、パンドラ様」


 使者は度肝を抜かれた。

 めちゃくちゃ美しい耳長の少年がそこにいたのである。声まで美声である。

 芸術の国の使者がギラっと目を輝かせて、パンドラの護衛に緊張が走る。

 殿下の部下を誘拐されちゃ困るのである。


「シルキは神から弓の才能、精霊を見る才能を与えられているのですよ。この年で獲物を狩ることが出来るのです。いやぁ。私を元にした種族、優秀すぎでしょう。後美しい」


 忌み子として神を信じず自己肯定感も低かったパンドラはもういない。


「ドーフにガーフ。宿題できたかな?」

「弓作りは慣れてきたな」「他のものも作りたい」

「二人とも腕が良くて驚くほどです」


 ドワーフの子供二人と部下の言葉に、カイトは満足に頷く。

 

「ミニャとニニャはレイナの助手なので、連れて行ってはダメだよ」

「そんな、こんなに可愛いのに」

「ダメだよ。それに、この子達は僕達の上位種。すぐに強く大きくなるよ」


 フランソワは使者をお説教である。




「新素材を使用したポーションは順調に売れているね。部費は圧倒的黒字。私の才能が怖いな」


 ソラが嬉しげに語る。


「そりゃいいな。良さそうな作物があったら入荷してくれ」

「ああ、陛下。世話の必要が少なくて、美味しい作物を用意しておくよ」


そこで、パンドラが告げた。部屋に響き渡る声で。


「【クエストが発生しました。そろそろ子供達だけで生活出来そうですね。こちらの時間で1ヶ月以内に子供達をニューワールドへ置いて10年時を進めてください】」

「ええー! ニニャとミニャとポチ子とタロ子とドーフとガーフとシルキでゴブリン蔓延る森を10年間生き延びろ!? 1日だって無理だよ!」

「10年は長すぎだろ!」

「落ち着け。魔物よけのある神殿さえあれば、そう難しい事じゃない。畑を作って時間スキップを繰り返せば、畑は拡大できるし」

「10年分の食糧の備蓄か……出来る? ソラ」

「7人分とはいえ10年分だから、部費が圧迫されるなぁ。やるけども」


 その言葉を聞き、人々はミニャを見る。幼女である。コロコロしている。

ニニャを見る。幼女である。ふくふくしている。

ポチ子を見る。幼女である。尻尾が項垂れてしまっている。

タロ子を見る。幼女である。尻尾が膨れてしまっている。

ドーフを見る。ショタである。手元には小さな弓。可愛い。

ガーフを見る。ショタである。手元には小さな鏃。可愛い。

シルキを見る。ショタである。顔の良さが天元突破のショタが困り顔をしている。


人々は結束した。可愛いは正義なのである。


「神様は鬼ですわ〜!」

「僕、ニニャちゃんをお家で飼う!」

「シルキくんが困ってますわ! 子供達だけで恐ろしい怪物の森に放置するなんて!」


 荒ぶる人々。


「大丈夫。少しずつ慣らして、逞しく育てるから」

「そんな頑張る子供達への寄付はこちらに! こちらに!」


 金儲けを頑張るソラ。


 そして、わちゃわちゃして1ヶ月がすぎ、みんなの見守る中、俺達は扉を閉めて10年時を進ませた……。

 ご、ごくり。固唾を飲んで見守る一同。



「ミャ!」


 猫耳幼女が飛び込んでくる。それを抱き止めようとするトール。

 だが扉の結界に阻まれてべちゃりとなる。

 この子はミニャではないのだ。

 困惑した空気が流れそうになった瞬間!


「会いたかったぜ、殿下ー!」


 背の高い、殿下達よりも背の高い猫娘がお腹を大きくして目を潤ませ、俺達に微笑んだ。





 脳破壊!













説明しよう! 獣人は大きくなるのがめちゃくちゃ早いのだ!

エルフ族とは真逆なのである!

シルキと同じく妖精族のドーフとガーフは未だショタである。

また、神殿は村のようになっていた。

それはそれとして、シルキはなんで女装してるん?

パンドラ殿下の嫁になる? ん。何か重大な齟齬と誤解があるようですね……。

パンドラはアワアワと首を振っている。


「皆、殿下達が神様に選ばれた、私たちを導くものだ。きっと私達を助けてくれる」

「よわっちそうじゃないか。本当に役立つのか? そいつらが?」


 ムッキムキの完全犬顔の大男がこちらを伺ってくる」


「王様は凄いんだぞ! 殿下達も! あたしにも勝てなかった奴がグダグダ言うんじゃないよ!」


 あんなムッキムキにミニャが勝ったらしい。

 愛らしい幼女はもういないのだ……。


「【次のクエストは森の主退治です】」


 後、クエストの頻度もうちょい減らしてもらってもいいですか、神様。

 獣人を愛でていた人達が寝取られショックに気絶しちゃったんです。

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王子戦隊アドバイザーズ @yuzukarin2022

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