第3話
放課後。
俺は、早速農業計画書を持ってきた。
「じゃがいもこそ至高! そうは思わないかね、諸君! うっまぶしい!」
中に入ると、なんか王子達がいつもの2倍くらいキラキラしてお茶会していた。
もっというと貴族的な空気でバチバチしてた。
扉の向こうでは、幼女達がレイナともう一人のメイドにまとわりついている。なんとフリフリのメイド服である。
「に?」
「くぅ?」
めちゃんこかわいい。可愛いが正義だとしたら、この子達は絶対正義である。
「お腹空いたろ。国民を飢えさせるのは無能な王だからな。パンを持ってきたんだ」
「そのパンは自分で食べておけ、陛下。この子達は助手兼メイドとして雇い、ちゃんと朝昼おやつと食事を与えている。それより今後の計画だ。国民の育成を含めてな」
「わかったよ、ラスバ」
「公用語は帝国語に決めました。一番魔法語に発音が近く、魔法語を覚えやすいからです。以後、部室では帝国語で喋ってください。これが今日上がった議案です」
「わかった、パンドラ。ありがとう。おお、結構あるな」
俺も慌てて資料を配り、そして俺が議長となって会議を開始した。
「まずは絵本の件から……」
『私という人類の宝を生んだ偉大なるお母様。
詳細は言えませんが、見える友達も見えないお友達も増えて、毎日とても楽しいです。それでお願いがあるのですが、常人には見えないものが見えるという子達を10人程ご用意出来ませんか? もちろん、教育の終えてある者、一芸に秀でた者が望ましいです。見えるのは最低条件です。それと婚約者ですが、私の嫁はエルフ一択なので、婚約破棄をお願い致したく思います。そもそも、見えもしない娘は私には相応しくないのでは? 私にはもっと美しく、高貴で、賢く、友人の多い娘が似合うと思います。エルフがぴったりだと思います。耳が長いですが、慣れるとそれもまた美しく思えると思いますし。結婚式には呼びますね。あ、新たに国を作るので、もう帰りません』
パンドラの母親は仰天した。いきなりの自己評価天元突破な挨拶に始まり、隠していたはずの見える事と毛嫌いしていた常人には見えない何かを全力で自慢。これもエルフという女の力なのか。新たに国を作るとはどういうことか。エルフとはどんな女なのだ。だが、王妃が軽々しく動く事はできない。そこで、使者を送る事とした。
『兄上へ
詳細は言えないが、毎日充実している。父上に物作りの大変さを知れなんて言われて錬金の学校に送られた時は憤慨したものだが、今は感謝している。ところで、兄上は盗賊狩りをした事はあるか? 雑魚とはいえ、子供達を殺すのに流石に手が震えた。そんで、隙を見せて危うく殺されるところだった。自分が恥ずかしいよ。俺は思ったよりずっとちっぽけだった。でも、覚悟は決まった。俺は国を起こすので、ここでさよならだ。兄上の壮健を願っている』
乱暴者だが天才で、密かに自慢で大切だった弟が知らない間に盗賊狩りをさせられて命の危険を味わされて他国でクーデターを起こそうとしている件。
王太子は泡を食って出立の準備をした。妹弟達も心配して無理やりついてきて大変な事態である。
『腹違いの兄様へ
勝利宣言をここに送ります。
ざ ま あ 』
その手紙を読んだ時、王太子はクーデターの宣言かと慌てて周囲を見回した。
平和なひとときときょとんとした家臣の顔にホッとする。
そして、今度は大発明でもしたのかと直接出向く事とした。
『お父様へ。
運命に出会ったのでもう帰りません
(世にも美しい幼女の絵)』
その手紙を読んだ父は、息子はどうでもいいのでこの美しい幼女を連れてこいと命令を出した。
そんなわけで、要人達が来るという事で、学生達が歓迎の意を表そうとがやがやしている所に、喧騒が響いた。
「いけません〜! 池の魚を獲っては〜!」
少女メイドの悲鳴。
それに続けて女子生徒の悲鳴が上がる。
猫の耳、尻尾とフリフリのメイドのやたらと早い幼女を見て、悲鳴をあげているのである。
幼女達はお魚を掲げて、走っていく。
その異形にあるいは驚き、あるいは気絶し、あるいは勇気を出してついていく。
そうやって生徒達を引き連れて、入ったのは開拓部。
「に! ににに!」
「にゃうぅ」
ぽてててて、と幼女がお魚を掲げる。掲げる先はソラ王子だ。
その艶やかな笑顔に、女子生徒達は気絶する。
「おや、ミニャ。ニニャ」
幼女はお魚を掲げる。
「「にっ」」
「そう。陛下」
「あいあいっ」
パチンとトールが指を鳴らすと、魚は焼き魚になった。調理スキルである。
「食べても良いよ」
頭から魚を食べて、トールに手を拭かれる幼女達。
「申し訳ありません!」
「池の魚は部費から補填しておこう」
「ソラ殿下! そ、そちらの子達は? 獣の耳と尻尾の、なんて奇妙な……」
「この子は、開拓部で開拓している村の子だよ。可愛いだろう?」
嫣然と微笑むソラ殿下に、女子生徒はポーッとなる。
「そうかしら……そうかも……」
「そうだよ」
「撫でてもいいですか?」
「撫でてもいいかって聞いてるよ。ミニャ。ニニャ」
「にゃ! にゃにゃ!」
「にゃー!」
幼女達は、銅貨の絵を掲げる。ひと撫で銅貨3枚である。これで菓子を買うのだ。
ソラ殿下の英才教育は始まっている。
まあ、幼女達の毛皮のフワッフワのお手入れの維持に掛かっているのは銅貨3枚程度ではないのだが。
トールはおやつのクッキーを食べたら農作業である。
奥では、この国の王太子が必死にカイトに言い募っている。
「最愛なる弟よ。この国は君のものだ。だから、この扉の向こうの物はお兄ちゃんのものなんだよ。わかる? わかるよね? わかってほしい」
「この国を捨てるのですか!」
「先に捨てたのはこの国だよ。無能王子って言って教育打ち切ったじゃないか。それにね。確かに私は時空間属性というとても珍しい属性だとわかったし、空間拡張鞄を作れることもわかったけどね。この力は現場に出てこそだと思うんだよ。新たに開拓する生まれたばかりのこの国にこそ、お兄ちゃんは必要とされてるんだ。わかるかい?」
「ずるいずるいずるい! 僕も未知の素材を調べて大冒険したいです!」
「でも、君選ばれなかったから。ごめんね。諦めて手垢のついた玉座で老人達に足を引っ張られててね」
「わああああああああああああ!!!」
「なんだ。またやってんのか? こら、焼くまで待てってポチ子、タロ子」
ラルバ王子がツノの生えて頭に宝石のある兎を掴み、犬耳の幼女がウサギに噛み付いている。直、名付けをしたトールは王子達にフルボッコされている。
フランソワ王子とパンドラ王子は設計図を見ながら、部下に指示を出している。
部室で大きく開かれた扉は、明らかにこことは違う空間につながっていて。
大騒ぎに、ならないはずがなかったのだ。
ところで、芸術の国の使者はミニャを袋詰めするのやめていただけませんかね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます