第86話侯爵夫人の葬儀⑦
教会の棺の側に医師が一人座っていた。
「…ソフィア様、髪の毛を一房いただきます」
医師は鞄の中から医療のハサミを取り出し、棺の中で眠るソフィアの髪の毛を一房切り落とした。
「…伸びましたね…初めてソフィア様にお会いした時は肩が隠れる長さでしたが…焦げ茶色の髪が似合います…」
医師は切り落としたソフィアの髪の毛を包み鞄の中に入れた。
「医師様」
「あ、はい」
「私達は親族が集まっています部屋に行きます」
ソフィアの父親は医師に声をかけ親族達の所へ挨拶に向かう話をした。
「…分かりました。私は…ソフィア様のお側にいても宜しいでしょうか?」
「医師様が一緒でしたら娘も寂しくありません」
両親は医師にソフィアの側にいるのをお願いした。
「お姉様、眠っているみたい」
エミリーがいる事に驚いた医師は笑顔を見せるエミリーを見上げていた。
「…ご両親と出られましたと思いましたが…」
「親戚のおじ様とおば様達はうるさいから行きたくないの、いつもお姉様と比べるから嫌いなの」
(…きょうだいがいる家庭ではよくある話だが…)
「…エミリー様、婚約者の方がいますと聞きました…何故ご結婚をしていますアレック様と…ソフィア様を裏切るような事をしたのですか?」
「私、アレックを見て一目惚れしてしまったの…最初は私もお姉様の旦那様だからって諦めていたけれど、アレックの屋敷へ行って二人を見ていたの、お姉様とお話もしないしアレックは私とばかり話をしていたから私が結婚する前に告白したの、凄く喜んでくれて
「君と結婚すれば良かったと少し後悔しているんだ…妻と一緒にいて楽しいと思った事はない」ってアレックから聞いて、私と結婚したいと聞いた時に凄く嬉しくなって、私の誘いをアレックは受け入れてくれたわ。」
「エ…エミリー様が先にアレック様に…婚約者の方に悪いと思わなかったのですか?」
「思ったわ…私の事を好きと言ってくれたアレックから離れる事なんて出来ないから…でも私、婚約者のポールも好きなの…二人とも私の事を愛してくれていたからずっと迷っていたら赤ちゃんが出来たから…私ポールは好きだけどポールのお義父様とお義母様が苦手なの…得にお義母様が嫌なの、まだ結婚もしていないのに私に色々とうるさくて…だから、結婚するのは両親がいないアレックが良いかなって思ったけれど、アレック…お姉様が亡くなってなんだか機嫌が悪いの」
「……」
医師はエミリーの話を聞き怒りを抑えていた。
姉のソフィアに悪いと心から思っていない事に気がついた…周りの者に悪いと思う気持ちが無い事も…
「…アレック様は何故この人を……」
「え?何か言いましたか医師様…あ!アレック、神父様とのお話は終わったの?」
「ああ…親族に挨拶に行く…医師、エミリーを頼めるか?」
「…いえ、エミリー様もご一緒にお連れください」
医師はアレックに顔を向けずエミリーを連れて行くようにと話をした。
「…分かった…エミリー行こう」
「え!?私も行くの?」
エミリーは不機嫌な顔をアレックに見せていた。
「…行かないのなら別にいい」
「え!?」
アレックはエミリーを残し歩き出し、エミリーは慌てたようにアレックの後を追った。
二人の様子を見ていた医師は棺の中で眠るソフィアに顔を向けた。
「…ソフィア様…妹でもありますエミリー様を許さないでください…貴女がいなくなり心から謝罪をしたいと言われるまで、彼女がしてきた事を許してはいけません…彼女もアレック様と同じように貴女の人生を奪った人なのですから…」
医師は棺の側で体を震わせてソフィアに話続けていた。
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