第85話侯爵夫人の葬儀⑥

アレックの側に神父が声をかけていた。

「…神父様…」

アレックは膝を着いていた足を起こし上げた時エミリーがアレックに両手を広げていた。

「アレック、私を立たせて」

笑顔を見せてアレックにお願いするエミリーにアレックはエミリーの体を支え、その様子を神父はじっと見ていた。

「…すみませんが、アレック様とお二人でお話しをしたいのです」

神父はアレックとエミリーを見て二人で会話をお願いしていた。

「分かりました。エミリー、神父様と話をしてくる」

「分かったわ」

エミリーは神父とアレックの側を離れアレックは神父へと顔を向けた。

「…ご一緒にいました令嬢の方は、ソフィア様の妹様ですか?」

「はい…」

「……アレック様のご両親も政略結婚でしたが、仲の良いご夫婦でした…」

「はい、私も知っています…結婚をしましたら両親の様に仲の良い夫婦になりたいと思っ…ぁ…」

アレックは話の途中神父の顔を見て気づいてしまった。

「…アレック様も亡くなりました奥様お一人を愛していると思っていました…奥様…いえ、ソフィア様のご両親からお話は聞きました」

「え…」

「それから埋葬の事ですが…ソフィア様の埋葬は、ルモア家で永眠いたしますとお聞きしました」

「!?」

アレックは、神父からソフィアの墓はパルリス家ではなく実家のルモア家で埋葬すると聞き驚いていた。

「……」

「…そのご様子では知らなかったようですね…ソフィア様にはこれから永い眠りに入りますから、ご家族とお話をしてお決めください…」

「…分かりました…有り難う御座います…」

神父はアレックと話を終えアレックは茫然とした顔で立っていた。

「…お義父さんからの離婚の礼の意味はこういう事だったのか……」

茫然と立っているアレックの側に父親が声をかけていた。

「神父様から話しは聞いたと思うが、ソフィアは私達の元へ帰らせてもらう、反対される理由はないはずだ」

父親から言われたアレックは言い返せなかった。

「……」

「それと、葬儀が終わった後にでも娘の物は返して欲しい」

「え!?」

「娘の荷物は実家から持って来た物ばかりだろう?買い物も行けなかった娘の荷物は少ないだろうから直ぐに送る事はできるはずだ」

「……っ」

アレックは、父親の話す声が胸に刺さり自分の側から妻だったソフィアの物が何も残らないのを思い知った。

「…それから、エミリーの事だが葬儀が終わった後にでも婚約者との話しの場を作って欲しい」

「…分かりました…」

「侯爵はエミリーに婚約者がいる事を知らなかったと話していたが、ソフィアと向き合い話していたのならエミリーを知る事が出来たはずだ…」

「……」

父親はアレックの肩に手を置き笑みを見せていた。

「もし、婚約者と婚約破棄になった場合君がエミリーと産まれて来る子供を養ってくれると思っている…子供が君に似ていなくても見捨てないと信じている…ソフィアと別れてまでも娘のエミリーと一緒になりたかったようだからな」

「……っ」

軽くアレックの肩を叩いた父親は側を離れ、アレックは父親から言われた事に動揺していた。



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