第84話侯爵夫人の葬儀⑤
「娘のソフィアと離婚してくれてありがとう」
「!?」
アレックは父親からソフィアと離婚をした事のお礼を言われ驚いていた。
「…あの…お義父さんそれは…」
「娘を私達の元へ帰してくれてありがとうと言ったんだが、侯爵はソフィアが屋敷にいるのが嫌だったのだろう?」
「え…」
「愛してもいない妻が側にいるのが耐えられなかったが、仕事の為だから仕方ないと言っていたそうだな」
「…それは…」
アレックは父親から言われ真っ青になっていた。
「ソフィアは侯爵と結婚して一度も一緒に過ごした事がないと聞いたが本当か?」
「あ…」
「披露宴ではソフィアの代わりにエミリーが行っていたそうだが、旅行もエミリーが一緒に行き二~三週間屋敷をソフィアに任せていたと聞いたが本当か?それも数回旅行に行っていたそうだな…その間ソフィアは何をしていたのか…妻に仕事を任せ夫は旅行を楽しんでいたとは…こんな夫でも娘は侯爵の側を離れる事が出来なかったのだろう…」
父親は涙を溜め悔しいが娘の前だからと怒りを抑えていた。
「……も…申し訳…御座いません…」
アレックは父親の前で土下座をして謝っていた。
その姿を見た父親はため息を吐いた。
「はあ~っ…侯爵には失望した。真面目な好青年と思い娘を嫁がせたのが間違いだった…」
「…うぅ…」
アレックも後悔はしていた…ソフィアに向き合っていたら、エミリーから好意な言葉を言われても突き放す事が出来たのにと…誘惑に負けた今の自分に悔やんでいた。
「お父様、アレックを責めないで…」
エミリーは母親の側から父親とアレックの姿を見て、アレックの側に行きたいが父親が怖くて側に行けずにいた。
「元はと言えば、お前が侯爵に近づかなければこんな騒ぎにならなかった」
「何度も謝ったのにどうしてまた、私を責めるの?お姉様が亡くなったのは私のせいではないわ、お姉様が何も言えなかったのが悪いのよ!」
「お前は~~…」
「お姉様、お姉様、起きてよ!お父様が私に怒るの孫が出来て喜んでくれると思ったのに…私はお姉様の代わりに身籠ったのに、それなのに皆ソフィア、ソフィアってお姉様ばかり構って、そんなの狡いわ」
「エ…エミリーなんて事を言うの…」
「だって…」
「エミリー、お前という娘は…」
「ルモア様!!」
教会の中に入って来た神父が、親子喧嘩をしている姿を見て騒ぎを止めた。
「…神父様…」
「お嬢様の前で声を上げるのはお止めください!お嬢様の魂はあなた方のお側にいるのです。旅立ちたくても心配で旅立ちが出来なくなります」
神父の声を聞き静かになった。
「…申し訳御座いません…神父様…娘を宜しくお願いします…」
両親は頭を下げて神父にお願いをした。
「アレック…」
エミリーは両親が神父と会話をしているのを見て、床に膝をついて下を向いたまま動かないアレックの側に来ていた。
「……お義父さんに妻の事を話したのか?」
「えっ…うん、昨日お父様が今まで屋敷でどんな生活をしていたのかと言われて…私の事も話したの…」
「……そうか…」
アレックは「ふっ」と声に出し苦笑いを見せていた。
(…以前は、自分の意思をはっきりと言うエミリーに好感を持っていた…だが、姉の死を哀しむのではなく羨ましく思うとは…)
グイッとエミリーはアレックの腕を組みアレックは驚いてエミリーの手を離した。
「何をしている…」
「え!?昨日、アレックと離れて過ごしていたから…側にいても良い?」
「……はぁ…」
(エミリーが周りを気にしない所が良いと思っていた自分が今では呆れてしまう…愛していた女に裏切られ…こうも気分が変わるのか…)
「アレック様、宜しいでしょうか…」
神父がアレックとエミリーの側に来て声をかけていた。
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