第81話侯爵夫人の葬儀②

教会に着いたアレックと医師は、馬車から運び出され教会の中へ棺が入るのを二人は何も話さず見ていた。

「……」

「……」

「アレック~ッ!!」

涙目になりながら走り出すエミリーはアレックの胸を抱き締めた。

「つ!!」

「アレック、アレック!助けて、お父様がずっと怒っているの!!」

身体中の痛みが治っていないアレックは、エミリーが抱き締めている為苦痛の表情を見せていた。

「……離れてくれないか…」

「え?」

「…身体中がまだ痛いんだ…」

「あ!…ごめんなさい…」

エミリーはアレックの体から離れ「はあ…」とアレックは息を吐いた。

「…お義父さんがどうした?」

「昨日、屋敷から帰ってお父様が私に怒るの…私、アレックの奥さんになるのに、ポールと話し合いをするようにと言われたの…」

ピクッとアレックの瞼が動き、父親の手紙を見て知っていたがエミリーに問いかけていた。

「ポールとは誰の事だ?」

「え…」

笑みを見せないアレックを見てエミリーは戸惑っていた。

「もう、俺に隠す事はないだろう?何もかも知ってしまったから、ポールは君の婚約者だろう!?」

「あ…!」

「それに、まだ君を妻に決めたわけではないんだ」

「え!?でも…私達昨日約束したわ…結婚式を挙げてくれるってアレック言ってくれたわ…」

ガシッとアレックはエミリーの腕を掴んだ。

「何故、今まで婚約者がいる事を俺に話さなかった」

「え…あ…い、言えなかったの…貴方が好きだから言えなかったの…」

涙目になるエミリーにアレックは宥める事なくエミリーを責めていた。

「言えなかったでそれで済むと思っていたのか?婚約者とも今まで会っていただろう!?俺がいない間、君が屋敷を出て帰って来ない日は実家に帰ると嘘を話し婚約者の所へいたのは分かっているんだ」

「あ…ご、ごめんなさい…でも、私はいつもアレックの事を考えていたわ…」

「嘘を言うな!」

アレックの怒鳴る声にエミリーは驚き涙を流していた。

「お二人ともやめてください!今日は大事な日なのです。一番にお二人に言いたいのはソフィア様なのです!」

「……っ」

「ひっく…ひっく…ううっ…お姉様…お姉様…」

「…泣きたいのはソフィア様です…その事をお忘れなく、二人とも教会の中へ…ソフィア様がお待ちです」

医師はアレックとエミリーに教会の中へ入るように話をした。

まだ、教会には親族達に貴族達が来ていないため外は静かだった。

離れには別の教会が建ちザワザワと賑わう姿があった。

「…向こうの教会は…結婚式が始まるところでしょうか…」

医師はソフィアの結婚式には出席出来なかった。

(…急患で式場に行く事が出来なかった…今思えば行かなくて良かったとも思ったが…貴女の花嫁姿を見たいとも思う複雑な気分です…)

トン…と腕にエミリーが泣きながら医師に寄り添う姿を見て驚いていた。

「アレックさ…」

スタスタと先に歩くアレックに医師は「え?」と思わず声を出した。

「エ…エミリー様、アレック様は先を歩いていますので…」

「…医師様の側にいたいの…駄目ですか?」

潤んだ目を医師に向けるエミリーに医師は息を吐いた。

「行きましょう、ご両親が待っています」

「え…はい…」

エミリーは医師に潤んだ目を見せたが、自分を構ってくれないと分かると医師から離れアレックを追うように歩いていた。

「……どうして彼女のような人が貴女の妹なのか…」

医師は離れの教会を見て、目に涙が溜まり手で拭うとソフィアが待つ教会の中へ入って行った。




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