第76話真実を知ったとき…⑳
アレックの治療が終わったのを見た執事はアレックと医師の側に来ていた。
「…旦那様、葬儀の手続きを教会へ行ってまいります」
「…頼む…」
「それから、親族の方々にご連絡をして宜しいでしょうか?」
「…ああ…」
アレックは短い返事をして、執事は部屋を出ると入れ代わりのようにメイド長が部屋の中に入り、アレックの顔を見て驚いていた。
「…だ、旦那様…」
「…ふっ…驚いただろう…妻を蔑ろにしてきた罰を受けたんだ…」
「……」
メイド長はアレックの肩を落とす姿を見てポケットから二通の手紙を渡した。
「…旦那様、奥様から預かっていました手紙です」
「手紙…妻から?」
「奥様のお父様からの手紙と奥様が旦那様に宛ました手紙です」
「……」
アレックは、封筒に自分の名前を書かれたソフィアの字を見て涙が流れ落ちていた…手紙に酷い事を書かれてもアレックには、初めてソフィアから貰う手紙が嬉しかった…
「…お父様からのお手紙は、エミリー様の事が書かれていますと奥様が申されていました…」
「エミリーの…!?」
アレックは父親の手紙を見て『婚約者のポール君と衣装選びを約束しているそうだ。エミリーに早く帰るようにソフィアからも言ってくれ、来月は式を挙げるんだ。招待状は、エミリーが直接お前達夫婦に話をするから要らないと言っていたが、聞いたか?』
「……」
アレックは父親の手紙を読み終えグシャッと握り締め震えていた。
「…旦那様?」
「……い、今まですまなかった…お前達使用人を解雇してきた事を…辞めて行った者達に申し訳なかった…」
「旦那様…」
アレックは、エミリーから気に入らない使用人を何人も辞めさせていた事をメイド長に謝罪した。
「…妻が最後に話をした…お前達使用人を大切にして欲しいと…簡単に辞めさせるような事はしないで欲しいと…」
「…お、奥様が…!?」
メイド長はアレックから話を聞き、最後まで使用人の自分達を思ってくれた事に…礼を言いたくても側にいないソフィアに涙を流した。
「私達も屋敷に戻ろう…ソフィアが亡くなった事を知らせなくては…」
「ええ…」
「お前はどうする?私達と帰るか?それとも屋敷に残るか…」
「え…」
エミリーは戸惑っていたアレックに婚約者がいる事が分かってしまい、自分に笑顔を見せないアレックに戸惑っていた。
「…私は、残るわだって…」
「帰ってくれ…」
「え?」
「…ご両親と一緒に帰ってくれ」
アレックはエミリーに帰るように話をした。
「でも、私は…」
笑みを見せないアレックを見てエミリーは戸惑っていた。
「…エミリーは一緒に帰る事にする、色々と聞きたい事もある」
「!!あ…」
父親から話があると聞いたエミリーは、真っ青になりアレックの方を見た。
「ア、アレック…」
「……」
「…エミリー帰りましょう…ソフィアには明日会えるわ…」
「お姉様…」
母親はエミリーを支え一緒に帰る話をした。
父親はソファーに座りまだ動けないアレックの側へ歩いていた。
「侯爵、お前にした事に謝る気はない」
「…申し訳御座いません…」
「お前から謝罪を貰っても娘は還っては来ない…もう、二度と会えない遠い所へ行ってしまった…」
「……」
「…私は、お前が今まで娘にしてきた事を許さない…エミリーとお腹の子は、婚約者を交えて話し合いをする…そのつもりで、心の準備をする事を言っておく」
「……」
アレックは下を向いたまま黙って父親の話しを聞いていた。
両親はエミリーを連れて屋敷へ帰る事になり、ソフィアの部屋では騒がしかった声が静かになり、医師とメイド長は下を向いたまま動かないアレックの姿を見て医師は、メイド長に「部屋を出ましょう」と声をかけアレックとソフィア、二人だけになっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。