第74話真実を知ったとき…⑱

「ア…アレック!」

エミリーは母親の側を離れ、床の上に倒れているアレックの側へ駆け寄り涙目になりながらアレックを心配していた。

「アレック…ごめんなさい…お父様が酷いことをして…」

「……」

アレックはエミリーの顔を見ず倒れた体のままベッドの方を見ていた。

母親はエミリーから離れると父親がいるベッドの方へと歩き、そして変わり果てた娘の姿を見て体が固まっていた。

「……ソフィア!?…」

母親は両手を重ねている手を触ろうとして手が止まった。

「…あ…」

左手の手首には、包帯が巻かれ包帯から赤い血が滲み出て固まっていた。

「…ソ…ソフィア…痛かったでしょう…どうして私達に話してくれなかったの?…話してくれていたら……一人で悩んで苦しんで…」

母親は涙が流れ落ち、ソフィアの重ねていた手を撫で娘の死を悲しんでいた…

「…アレックさん…貴方は…ソフィアが初めて恋をした最初の人なのよ…」

「!!」

(えっ!?)

アレックは声を出せない為顔を上げ驚いていた。

「アレックさんに言わないでとあの子から口止めされていたの…男の人と付き合う事が苦手な娘だったから…

貴方と結婚式を挙げて屋敷を出る時にソフィアは私にこう言ったわ…『アレック様は私が初めて好きになった人だけど、私が初めてだと分かった時はどうしたらいいの?』…私は『大丈夫だから、子供が出来た時は一番に知らせて』…と言ってそれが…ソフィアとの…娘との最後の会話になるなんて…」

話を終えた母親は娘の側で涙を流していた。

(……妻が…初めてが…俺…だったのか…?)

アレックはボロボロと涙を流し後悔した…心の底から妻だったソフィアに振り向こうとしなかった自分に後悔した…

(…俺は…俺は…エミリーのうわべだけを見ていた…妻の父親に殴られやっと目が覚めた…何もかも無くして目が覚めた……)

アレックは涙を流し哀れな自分に涙を流した…

「アレック、泣いてるの?痛い?」

エミリーがアレックの顔の傷に手で触っていた。

「っ…触るな!」

「え…ごめんなさい…」

「…医師…を呼んでくれ…」

「うん」

口を開くと痛いがアレックはエミリーに医師を呼ばせた。

「アレック様…」

医師はアレックの姿を見て予想以上の姿を見て驚いた。

「…と、とにかく…ソファーに…起き上がれますか?」

「…っ…あ、ああ…」

アレックは医師に支えてもらいながら歩き足も歩くと痛みだし、なんとかソファーへ座る事が出来るとアレックは、背凭れエミリーが隣へと座った。

「大丈夫?アレック…」

目に涙を溜めて心配をするエミリーを見て苦痛を感じていた。

(…本当に心配しているのか?真実を知って何もかもが嘘のように聞こえる…婚約者がいる事を俺に何も言わずこの半年俺を騙し続け…エミリーのいいように振り回され…妻と一緒に過ごす事も出来なかった…」

アレックはエミリーが屋敷へ来てから今までの事を思い出し悔やみ震えていた。

「……邪魔だ…離れてくれ…」

「え?」

アレックはエミリーに一言いった後何も話さず、エミリーの顔を見なかった。

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