第71話真実を知ったとき…⑮

《★注意!暴力暴言あり》

父親の険しい顔で、アレックを掴み上げ怒鳴る父親にアレックは戸惑うばかりだった。

その様子をさっきまで再会に喜んで泣いていたエミリーは、父親の怒鳴る声に気づき真っ青な顔になりお腹を支えていた。

「…娘に何があった…」

「あ……っ…」

「娘は自ら命をたったと聞いた…結婚をして一度もお前達夫婦は私達の所へ顔を出す事もなかった…以前娘の手紙で、侯爵と一緒に仕事が出来て嬉しいと書いてあった…」

「え!?」

「…仕事が忙しいのも私は知っている…時々ではあったが、店にも様子を見に行った事もあった…客と会話をする娘を見て元気にしていたとも思ったが、屋敷にいた頃より痩せていたのが気がかりだったが、困った時は連絡があるだろうと娘に会わずに帰った…」

「……」

涙を流して話をする父親にアレックは何も言えず、胸ぐらを掴まれたまま顔は下を向いていた。

「私達の方から会いに行こうとも考えた…エミリーの事もあった。何ヵ月も世話になっていた事もあり連れて帰るつもりでもあった…お前達に子が出来ないのはエミリーがいるからだと思ったからだ」

「…っ」

「…ぁ…ぁ…」

「エミリー?」

ガタガタと震えながら母親の腕を握りしめるエミリーの顔は真っ青になっていた。

「…侯爵…娘は…お前の妻だった娘は、何故自ら命をたたなくてはならなかったのか…」

「……あ…あ…」

声が出ないアレックは目に涙を溜めていた。

「侯爵!」

「あ…こ…子供が…エミリー…さんに…子供が…」

ビクッと名前を呼ばれたエミリーの体が動いた。

「エミリーに子供?」

父親は険しい顔のままアレックに問いかけていた。

「エミリーに子供とはなんだ?」

「……あ…」

「なんだと聞いている!」

「エ、エミリーさんのお腹には…私の子を…身籠っています……」

震えながらアレックは父親に打ち明けた。

「……もう一度言ってくれ…」

「…エミリーさんは…私の子を身籠りました…その事を妻に…ソフィアさんに話をして……」

バキッ!

ガタン!ドサッ!

「きゃーっ!?アレック!」

「!?な…お、お父……」

エミリーと母親はソファーの近くで父親に殴られて倒れ込むアレックに驚いた。

「つ…」

医師から最初に殴られた痕を父親が殴った為、唇が切れ血が流れていた。

「…お…お前は…妻がいながら妹に手を出すとは…」

「も…申し訳…御座いません…」

床に倒れた体を俯せになり父親に泣きながらアレックは謝った。

「立て…」

「……ぅう…」

ふらふらとなりながら立ち上がったアレックに父親はまた胸ぐらを掴み、睨むように声を出した。

「…お前は…エミリーに婚約者がいる事を知って手を出したのか?」

「え……こ…婚約者?」

アレックは父親からエミリーの事を知り茫然としていた…



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