第69話真実を知ったとき…⑬

姉のソフィアが亡くなった事を知ったエミリーは気が沈み、アレックと一緒にソファーに座り時々涙を流していた。

「……うう…お姉様…」

「エミリー…」

アレックは泣き止まないエミリーを心配していた…お腹の子に影響するのではと心配した。

「…エミリー、君がこんなに泣くとは思わなかったよ…」

「ヒック…だ、だって…お姉様がいなくなったら誰が私達の子供を見てくれるの?」

「え!?…あ、ああ…それは後から考えよう…今はソフィアの側にいよう…」

アレックは少し驚いたが、母親になるから子供を育てる事を考えるのは当たり前だと思い、エミリーを宥めていた。

エミリーの話し声が聞こえた医師と執事は茫然としていた。

「…エミリー様は、奥様に子育てをさせるつもりだったのでしょうか?もし、そうなら余りにも身勝手すぎる…姉の死で悲しんでいる姉思いだと思っていましたが…」

「……」

医師は呆れたように声に出し、執事はベッドの上で寝ているソフィアへと歩いていた。

「……奥様…」

執事は、冷たくなったソフィアの重ねた両手の上に手を置き目には涙を溜めていた。

「…奥様、一人にしてしまい申し訳御座いません…もうすぐ、ご両親がお見えになります…それまでわたくしがお側におります…」

執事はソフィアに笑みを見せ側にいる約束をした。

医師も執事の姿を見て、ソフィアの側へ来ると左の手首の包帯を見て苦痛の表情を見せていた。

「…もっと奥様にお話をするべきだったと悔やんでなりません…アレック様が仕事で忙しく夫婦の時間が取れないのだと思っていました…それが…」

医師は言葉に詰まり執事に打ち明けた。

「……私は、奥様をお慕いしていました…」

「え!?」

執事は医師の告白に驚き、ソフィアを見下ろす医師に顔を向けた。

「…医師様…いえ…アラン様…」

「ふ…この屋敷に医師として務め久しぶりに名前を呼ばれました…」

「奥様をお慕いしていましたとは…」

「…奥様を診察していました時から…ですが私は医師です…アレック様との事で悩んでいます奥様に言えるはずはありません…それに奥様はアレック様を愛していたのですから…」

「アラン様…」

「今では後悔しています…奥様に私の気持ちを伝えていたらと…」

医師は、ソファーに座るアレックとエミリーを見て両手を握りしめていた。

「…有り難う御座います…奥様を想っていただき…わたくしもアラン様に、奥様と旦那様の話をしていましたら…奥様は…」

「……」

医師は冷たくなったソフィアの頬を触り、愛した女性の死を哀しみ冷たくなった唇を重ねた。

執事は医師がソフィアに口づけをした姿に涙を拭い、エミリーを宥めていたアレックは偶然にもその光景に驚き茫然としていた。

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