第65話真実を知ったとき…⑨

「…エミリー様…この部屋は奥様の部屋です。静かに開けてください…それから、入る前に必ずノックをするようにと奥様から何度も言われていますが…」

「そんなの分かっているわ!お姉様は何処?無事なの?」

執事の問いかけを無視するエミリーは部屋を見渡しアレックの姿に気づき驚いて声を上げた。

「きゃーっ!?アレックどうしたの?口元が切れてるじゃないの!」

アレックの側を駆け寄るエミリーは両手でアレックの頬を支え心配する姿にアレックは頬を染めて笑みを見せていた。

「…大丈夫だよ、エミリー…たいした事はない…」

「酷いわ…唇が切れているじゃない…暫くキスが出来ないじゃないの…」

「な!?…エ、エミリー、皆が見ている前で…」

「別にもう、隠さなくても良いでしょう?お姉様とも離婚したのだから、私達は夫婦になったのよ!」

「っ…エ、エミリー!?」

気まずいアレックは、堂々と話をするエミリーに戸惑っていた。

カッカッ…一人のメイドがエミリーとアレックの側に行き立ち止まった。

「…エミリー様」

「何?」

パシッ!

!!

メイドは顔を上げたエミリーの頬を叩いた。

「!おい、何をする!?謝れ!」

怒りを見せるアレックは、エミリーを抱きしめエミリーはアレックの腕の中で涙を流しメイドに睨むように声をあげた。

「…主の妻に手をあげるなんて…クビよ!この屋敷から出て行って!!」

「言われなくても出て行きます!それからエミリーさん、貴女はまだ旦那様の奥様ではありませんから」

「な!?」

「それから、さっき貴女に叩いたのはソフィア奥様の代わりですから…」

「!」

「!!」

「長い間お世話になりました…」

メイドは軽く頭を下げ、ベッドの上に眠るソフィアを見て涙を拭い部屋を出た。

「ま…待って!」

部屋を出たメイドの後を続けてメイド達が部屋を出て行った。

「アレック、酷いわ…あのメイド、身籠った私に手をあげたのよ!」

「ああ、分かった。後で処分をくだすから…大丈夫か?」

「うん」

エミリーの頬を触るアレックの手をガシッと執事は握りしめた。

「な!?」

「旦那様…エミリー様…二人とも来てください…」

「ちょ…い、痛い!放せ!」

「アレック!?」

執事はアレックとエミリーを連れソフィアの側へと立ち止まりアレックの手を放した。

「今のお二人の姿を見まして、反省していない事が分かりました…奥様がお怒りで御座います…」

「!!…っ」

「え…お姉様?」

エミリーはソフィアの姿に今頃気づき、息をしていない姉の顔を見て震えていた…

「…お、お姉様?…ねえ、冗談はやめてお姉様…ねえ、起きて!」

ソフィアの腕を触ったエミリーは、まだ肌が柔らかいソフィアの腕を揺さぶり泣きながらソフィアを呼んでいた。



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