第62話真実を知ったとき…⑥

役所を出た一台の馬車がパルリス家に向かっていた。

馬車の中では、執事のリチャードがアレックとソフィアの離婚の手続きを終え屋敷へと向かっていた。

「……とうとう…旦那様と奥様が離婚してしまった…」

執事は離婚成立の書類に目を向け肩を落としていた。

「…これからどうすればいいのか…奥様かパルリス家に来られてから店の売り上げは伸びていた…他国からの客も増え、奥様が通訳として今まで店を支えて来られたのを旦那様は崩してしまった…旦那様はエミリー様を妻に迎えるだろう…使用人達はエミリー様をよく思わない者が多い…使用人に慕われてのパルリス家がソフィア奥様の代で終わってしまうとは…」

執事は書類をクシャッと握りしめ馬車からの景色を見て呟いた。

「…私も潮時かもしれない…」

執事は悩みながら屋敷へと向かっていた。

屋敷に着いた執事は、使用人やメイド達を見て何かがおかしいと思い屋敷の中に入った。

「……何故、皆泣いているんだ?」

屋敷の中にいるメイド達が泣く姿を見て執事は茫然と立っていた。

「リチャードさん!」

バタバタとメイド達が、執事が帰って来た事に気づき泣きながら側に駆け寄った。

「な!?皆さんどうしたのですか?」

「奥様が…奥様が…」

「奥様がどうしたのです?」

「うう…っ…」

「え…っ…え…っ…」

「うぅぅう~…」

メイド達は話したくても声にならず執事に中々言えなかった。

「っ…」

執事はメイド達の側を離れ自分の目で確かめるように廊下を走った。

(…すれ違うメイド達が泣いている姿ばかり…奥様の身に何か…)

執事は迷わずそのままソフィアの部屋へと走り、部屋の周りにはメイド達の泣く姿を見て「まさか…」と声に出した…

「あ!…リチャードさん…」

「…奥様は……」

「…部屋の中にいます…旦那様と医師様も…」

「旦那様と医師様!?…メイド長も一緒ですか?」

「……奥様のご実家に知らせに馬番の方へ…」

執事は胸のざわっきが一瞬に顔色が真っ青になり、手に持つ封筒を握りしめ部屋の中に入った…

部屋の中ではメイド達の啜り泣く声が聞こえ、医師の立つ側にはアレックの姿が見えていた…床に膝を着き顔の口元には殴られた痕が見え執事は驚いていたが、アレックが何故殴られていたのか分かってしまい、顔を向けた先にはベッドの上で眠るソフィアに気づいた執事は、両手を重ねている姿を見て震えかすれた声を出していた。

「……お…奥様……」

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