第55話振り向いてくれるのを願い(52)【遅すぎた夫婦(25)】
「お姉様…お姉様…ごめんなさい…」
エミリーは涙を流し姉のソフィアに謝っていた。
(…涙を流す貴女は綺麗ね…旦那様が貴女に振り向くのが分かった気がする…その涙が嘘偽りもなく私に見せる謝罪の涙だったらいいのだけれど…この先、旦那様と皆には迷惑かけて欲しくないけれど…そんな貴女にでも旦那様は許してしまうでしょうね…明るくて笑顔が素敵な貴女と違い、私はいつも旦那様の顔色を伺っていた…それでも私は、旦那様の隣で私に微笑んで欲しいと願っていた…)
バタバタと廊下を走る足音が聞こえメイドが医師を連れて来た。
「医師様をお連れしました!」
部屋の中に入った医師は、ベッドの上で仰向けになり左手には、アレックが巻いたスカーフが真っ赤に滲むのを見て医師は真っ青な顔になっていた。
「…な…何があったのですか!?」
「話は後だ!妻を助けてくれ!!」
(…妻…私は貴方の妻ではないのに…)
苦痛な表情を見せる医師はソフィアを見て声を出した。
「……最善を尽くしますが…奥様、頑張ってください」
(…医師様…ごめんなさい…貴方にはお世話になってばかりね…)
医師の治療が始まり周りは祈るばかりだった。
ズキッ!
「痛っ!?」
「エミリー?」
「…お、お腹が…赤ちゃんが…」
「!!」
エミリーのお腹に激痛が走りアレックは戸惑っていた。
「早くエミリーを別の部屋へ!医師、エミリーを見てくれ!!」
「し、しかし、奥様が…」
「っ…」
アレックの隣で蹲るエミリーは声を上げた。
「ああっ…痛い、痛い…助けて…アレック様…」
目に涙を溜めてアレックの体に寄り添うエミリーにアレックは、エミリーの体を抱き抱え医師に声を出した。
「つ!医師、私と一緒に来てくれ!!」
ソフィアは、アレックがエミリーを抱き抱える姿を見て、夫のアレックの姿を見るのはこれが最後だと見上げていた…
(…エミリーを抱き抱える姿を初めて見たわ…私にもしてくれたかしら…)
医師は戸惑いながらアレックの方へ行かなければならなかった。
「っ…奥様、奥様、お気を確かに…直ぐに戻ります」
「……」
ソフィアは医師に笑みを見せ部屋を出る姿を見届けた。
「奥様、奥様~っ…私が側にいれば……」
メイド長がソフィアに涙を流し謝る姿を見ていたソフィアは笑みを見せ『ごめんなさい…』と口を動かしメイド長は泣き崩れ他のメイド達も泣き続けた。
(…ごめんなさい…皆を泣かせてしまって…旦那様と医師様をこれ以上待つのは無理みたい…体の感覚と意識が保つ事ができないみたい…最後まで私の側にいて欲しかった…でも…これでいいの…死が近づく私よりも…妻となる妹と貴方の子供が旦那様を支えて行くのだから…)
ソフィアはゆっくりと瞼を閉じると閉じた瞼から涙が流れ落ちていた…
(…貴方に冷たく突き放されても離れる事は出来なかった…だって、貴方は…旦那様は…私が初めて好きになった……初恋の人だから……)
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