第54話振り向いてくれるのを願い(51)【遅すぎた夫婦(24)】
「だ、だれかーーっ!!奥様が…奥様が!!」
涙目になりながら階段を下りるメイドは助けを呼びに廊下を走った。
「誰か…誰かーっ!」
メイドは声を上げ叫んでいた。
「何?」
「どうしたの?」
「奥様が、奥様が、手から血を…」
「ええーっ!?」
「た、大変…メイド長!」
バタバタと騒ぎ出すメイド達は客室へ向かうメイド長を呼び止めた。
「メイド長、大変です、大変です!」
「どうしたの?皆で慌てて」
「…お、奥様が…奥様がーっ…」
「落ち着きなさい!奥様がどうしたの?」
涙を流すメイドにメイド長が腕を擦り宥めていた。
「…奥様の手から血が…血が流れて…」
「!!なんですって! ?」
メイド長はそのまま客室へと走った。
客室の部屋に戻ったアレックは表情が暗かった…
「アレック、お姉様は?」
「……」
「私、お姉様が屋敷に一緒にいて欲しいの!子供が生まれたらお姉様に子育てをお願いしたいと思うの…知らない人に子供を預けたくないわ~っ」
「…エミリー、お前…」
「旦那様!旦那様!」
メイド長が慌てたように客室の扉を開いた。
「どうした?ノックもせず…」
「奥様が、奥様が大変です!」
「妻がどうした?」
「手から血を流されて…」
「何!?」
「ええっ!?」
アレックとエミリーは驚き部屋を出るとソフィアの部屋へと急いだ。
バン!勢いよく開いた扉から、アレックとエミリーそしてメイド長に数名のメイド達がソフィアの部屋の中に入って来た…
「ソフィア!!」
「お姉様!!」
目を閉じていた私は、旦那様とエミリーの声に目を開けると不安な顔で真っ青になって見下ろす旦那様の姿が見えていた…
「…ソフィア…なんて事を…何をしている早く医師を呼べ!」
「は、はい!」
アレックは側にいたメイドに医師を呼ばせた。
「…ソフィア…しっかりしてくれ!もうすぐ医師が来る」
「……」
アレックは首に巻いていたスカーフを取り、ソフィアの左手首に巻き苦痛な表情で見下ろしていた。
(…何故…貴方がそんな苦しそうな顔をするの…)
「…ソフィア…」
(……私の名前を何度も呼ぶなんて…貴方と結婚してから一度も私の名前を呼んでくれなかったのに…)
ソフィアの目から涙が流れ落ち、アレックは初めてソフィアの頬に触れ涙を指で拭っていた…
(…最後に…貴方の指に触れ優しさを知って良かった……)
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