第53話振り向いてくれるのを願い(50)【遅すぎた夫婦(23)】

《★注意!痛い表現あり!!》

ソフィアは涙を流し部屋へと戻り泣き続けた…

「……旦那様…旦那様……」

夫の名を何度も声に出しソフィアは泣き続けた…いつの日か、夫が振り向いてくれるのを嫁いでから一年待ち続けていた…夫のアレックがソフィアに手を差し伸べようとする姿は…時は既に遅すぎた夫婦となった…

コンコン!

「奥様、私です…」

メイド長がソフィアの部屋の前に立っていた。

涙を拭うソフィアは扉を開けメイド長が驚いていた。

「お、奥様!?旦那様がまた…」

「…なんでもないわ…ごめんなさい、こんな顔で…」

「奥様…」

ソフィアは、メイド長を部屋の中に入れ机の引き出しから二通の手紙を取り出した。

「…この手紙を旦那様に渡して欲しいの」

「旦那様にですか…?」

メイド長は、二通の手紙を見てソフィアが書いた手紙と実家の父親の手紙を渡された。

「…奥様、何故ご実家の手紙を旦那様に?」

「父の手紙には妹のエミリーの事が書いてあるの…」

「エミリー様の?」

「…あの子は、大事な話を話さない事が多いから私も父の手紙を見て初めて知ったわ…もっと早く父に手紙を出していたらと思ったけれど…その時はもう…私も父の手紙を受け取った時に旦那様に渡す事も出来たのに…酷い妻だと自分でも思ったわ…私の苦しみを旦那様も知るべきだと…その事を隠し続けたエミリーの行く末も……」

「奥様…」

「……離婚届に名前を書いたわ…」

「!」

「私は、旦那様の奥様では無くなったの…メイド長、今までありがとう…心配ばかりかけてしまって…リチャードさんに直接別れを言いたかったけれど、役所へまた行かないといけないから…皆にも…会わずに別れを言うわ…」

「…お、奥様…」

ソフィアは、メイド長に笑顔を向け涙を流しメイド長も涙を流し続けた。

メイド長に別れを告げたソフィアは、部屋の周りを見渡しいつもの窓際に立っていた。

「……いつもはここから見る景色は嫌いだったのに…今は懐かしく思えるなんて…」

ソフィアは庭園に続く道を眺めていた。

「……旦那様と一緒に歩く事も出来なかったわ…」

窓から見る庭園の道を見た後、ソフィアは実家から持って来た荷物を見て触り、一枚の小さな肖像画を手に持った。

「…お父様…お母様…」

肖像画はソフィアの両親が描かれていた。

「…ごめんなさい…親不孝な娘で…孫の顔が見たいと…子供が出来たら一番に知らせて欲しいと…う…うぅっ…ごめんなさい…お父様…お母様…」

ソフィアは両親の肖像画を胸に抱き締め謝り続けた…

両親の肖像画を机の上に置いたソフィアは、化粧台の引き出しから小さな刃物を取り出した。

ベッドへと歩いたソフィアは、ベッドの上に座り右手に持つ刃物で左の手首を切り、そのままベッドの上で仰向けになり天井を見上げていた…

(……離婚をした後風の便りで旦那様とエミリーの話を聞くのが怖かった…エミリーのお腹の子が旦那様の子だと分かった時生きていく自信が無い私はこうするしか…)

コンコン!

「奥様、昼食はどういたしますか?」

メイドが昼食の知らせにソフィアの部屋に来たが返事がなかった。

「失礼いたします。奥様?」

部屋の扉を開け見渡したメイドはベッドの上に手から血を流すソフィアに驚いた。

「きやーーっ!?奥様!!」

驚いたメイドは慌て出し部屋を飛び出し駆け出した。





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