第49話振り向いてくれるのを願い(46)【遅すぎた夫婦⑲】
一人客室の部屋の中にいるソフィアは、役所からの封筒を手に持ち一枚紙を取り出し読んでいた。
「……夫の浮気だから慰謝料が貰えるのね…この一年私は貴方から妻だと思って貰えなかった…」
ソフィアは取り出した離婚届けの紙を封筒に入れ、顔を天井へと見上げると目を閉じ自分を落ち着かせていた…
コンコン!
「……俺だが…」
「どうぞ…」
部屋に入って来たのは夫のアレックと妹のエミリーが一緒に入り、先に座っているソフィアに顔を向けた。
「……」
「……」
「……」
ソフィアが座るソファーの前にはアレックとエミリーが一緒に座り、沈黙が続いた。
「…私にお話があるようですが…」
アレックはソフィアの問いかけに息を吐き、顔を合わせる事が出来ず頭を下げて話し出した。
「……俺と離婚して欲しい…君の妹が俺の子を身籠った……」
「……」
アレックは頭を上げる事が出来ずソフィアに謝った。
「ごめんなさい、ごめんなさいお姉様…私、初めて会った時からアレック様をお慕いしていたの…お姉様を裏切るような事をしてごめんなさい…」
目に涙を溜めるエミリーは姉のソフィアに謝っていた
「……」
ソフィアは二人の姿を見て何も言わず、役所の封筒をテーブルの上に置きアレックに渡していた。
「…これは?」
「離婚届けの紙が入っています…」
「「!!」」
アレックは、まさかソフィアから離婚届けの紙を貰うとは思っていなかったようで動揺する姿を見せ、エミリーは口元を隠す様に手を押さえ覗くように封筒を見ていた。
「……何故君が…」
「リチャードさんに会いました…そしてこの封筒を受け取ったのです」
「…そうか…執事に会ったのか…」
「…先に私の名前を書いています…後は、旦那様の名前を書きましたら私達は夫婦として終わります…」
「……終わる…」
アレックは、ソフィアから夫婦だった自分達が終わると聞き戸惑っていた…
「アレック様、中を見てみましょう?」
「…あ…ああ…」
封筒の中に一枚の紙を取り出しソフィアの名前が書いていた。
「……」
(…離婚を言ったのは俺なのに…何故こんなに胸が苦しいんだ…)
アレックは離婚の紙を掴む手が震え、ソフィアはペンをアレックの前に出した。
「…名前を書いてください…旦那様…」
「あ…」
『旦那様』自分を呼ぶ名前が最後のように聞こえペンを取る事に戸惑っていた。
「アレック様?私が書きましょうか?」
「貴女は書いては駄目よ!これは、旦那様が書かないと駄目なの…」
「わかったわ…はい、アレック様」
ペンを渡すエミリーを見てアレックはペンを受け取った。
(…もう、後戻りが出来ないと自分に言い聞かせていたじゃないか…エミリーを妻に迎えると……)
「……」
アレックはペンを握りしめ離婚届けの紙に名前を書いた。
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