第48話振り向いてくれるのを願い(45)【遅すぎた夫婦⑱】

(…買い物で思い出したが…いつだったか…

請求書が来ていたな…執事は支払いを終わらせてくれただろうか…)

アレックは、多額の請求書に驚いていたのを思い出していた。

『な!?なんだこの請求書の山は…!!』

『…未払いのお知らせと、クレマン様からのお手紙が来ています』

『叔父から?』

アレックは手紙の内容を見て手が震えていた。

『…叔父に二ヶ月も振り込んでいなかったのか?』

『…最近、お店の売り上げが伸び悩んでおりましたから…クレマン様には暫くお待ちいただいておりました…』

『…何故こんな事に…今まではなかったはずだ…』

アレックは多額の金額を見て妻のソフィアを思い出した。

(…俺がいない間妻が…俺に一言もなく…)

『妻を呼んで来て欲しい』

アレックは仕事部屋にいるソフィアを呼び出した。

『…お呼びでしょうか?』

『これは、なんだ?何を買ったらこんな高額になるんだ?』

アレックはソフィアに請求書の束をソフィアの前で投げ渡した。

『……』

『俺がいないと思い屋敷を抜け出し買い物をしていたようだな!これは君が働いた金で返して貰う』

『…旦那様、これは私ではありません…』

『は?夫である俺に隠し事をするのか!?』

『…では、妻の私に旦那様は隠し事はありませんか?』

『!!』

じっと見るソフィアにアレックは気まずくなり目を逸らしていた。

『……旦那様も私も身に覚えがないのでしたらエミリーではありませんか?』

『!!君は妹を疑うのか?…いや、だが…し、しかし…一緒に出掛けた時はこの様な…』

『……』

アレックの部屋にエミリーが入って来た。

『あれ?もしかして喧嘩?!ふふふ』

『…いや、エミリー聞きたい事があるが…』

『何?』

『…最近、俺がいない時に買い物をしたのか?』

『買い物?う~ん、アレック様といつも一緒に買い物をしているから…』

『…そうだよな、俺と一緒の時に買い物はしていないよな』

(エミリーが勝手に一人で買い物をするはずはないんだ…やはり妻が嘘を言って……)

ソフィアを睨むように見るアレックの側をエミリーが来て、数枚の請求書の紙を見てアレックに顔を向けていた。

『あ!忘れていたわアレック様支払いお願いね!』

『え!?』

『アレック様が留守の時、私実家に帰っていたのそれで友達と一緒に買い物を選んでくれたの…屋敷の模様替えに絨毯とカーテンを買ったわ』

『…な…何故、勝手な事をしたんだ!!』

アレックが初めてエミリーに叱り、側にいたソフィアは驚き、エミリーも驚き泣き始めた…

『ご…ごめんなさい…アレック様がいなくて寂しくて…帰った時に驚く姿が見たかったの…』

グスッと泣き始めたエミリーにアレックは戸惑い慰めていた。

『…声を上げて悪かった…だが、買い物は俺と一緒に行って欲しい…』

『うん…ごめんなさい…』

バタン!

『!?』

『きゃっ!?何?』

アレックはソフィアがいない事に気づきさっきの扉はソフィアが閉めたのだと…妻のせいにしたアレックは謝る機会を逃しそのまま忘れていた。

(……俺は…妻に謝りもせずに…)

コンコン!

「旦那様、奥様が客室でお待ちです」

メイド長がアレックを呼びに食事の部屋に来た。

「…そうか…わかった…待って貰うように…」

「わかりました…」

メイド長が扉を閉めるとエミリーは笑みを見せていた。

「お姉様にお話ね!なんだかドキドキする~っ」

「……」

アレックは、苦痛を感じながら妻のソフィアが待つ部屋へと向かった。




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