第47話振り向いてくれるのを願い(44)【遅すぎた夫婦⑰】
屋敷の中に入ったソフィアとメイド長はアレックが待つ客室へと歩いていた。
「……」
ソフィアは手に持つ封筒を見て廊下を歩いていた。
(…旦那様から先に言われる前に私が早く言ってしまえば…こんなに苦しくなかったのに…)
廊下を歩いているとある部屋に目を向けた。
「…メイド長、肖像画はどうなったのかしら…」
「肖像画ですか?…」
ハッ!と思い出したメイド長は、アレックがソフィアと一緒に描くはずだった肖像画はエミリーと描き、その後の話がソフィアにはなかった。
「…し、肖像画を納めます額の注文にお時間がかかりますと申されまして…」
「ふふっ、そんなに慌てなくて話をしなくていいのに…もう、私には肖像画はどうでもいい事だから…」
「奥様…」
「…この頃から二人で決めていたのね…私が肖像画の事を知らないと思って話さなかったと思うわ…何も知らない私は、旦那様から『用があるから仕事に戻る事が出来ないと思う、すまないが俺の代わりに頼んでいいだろうか』と、旦那様からいつもの様に仕事を頼まれ、メイドが『画家の方が肖像画を描きに来ています』と知らせてくれて…あの時の旦那様の慌てた顔が今でもはっきりと覚えているわ…私はあなた達のおかげで旦那様とエミリーを知る事が出来たの…」
「奥様…」
ソフィアは手に持つ封筒を握り締め客室へと向かった。
その頃、客室から出たアレックとエミリーは食事の部屋にいた。
「はあ~っ、美味しかった!」
エミリーは朝食を終え笑顔でお腹を擦っていた。
「嫌いな料理が出ていたから、食べないようにしていたけれど料理の匂いで、食べたいと思うと口に入れて食べている私に驚いたわ!赤ちゃんがお腹が空いていたから食べたんだわ~」
「そうか、良かったな」
食卓ではアレックとエミリーの和む会話がはずんでいた。
「ねえ、アレック~っ、後から買い物に行きたいわ」
「買い物?」
「生まれてくる赤ちゃんに屋敷内の模様替えをしたいの!フリルのレースが良いわ~それに、赤ちゃんのおもちゃにお洋服も沢山買いたいの!あっ、ぬいぐるみを忘れていたわ~ふふふふ」
「……」
エミリーの喜ぶ顔を見るのは好きだが、買い物続きに不安になっていたアレックは、ソフィアが自分に話した事を思い出した。
「…買い物は子供が生まれてからにしないか?」
「え!?どうして?私、買いたい物があると直ぐに買いに行かないと気がすまないのアレックも知っているでしょう?」
「えっ…あ、ああ…」
「私は、赤ちゃんのお買い物がしたいの!今からお買い物をしないと買い忘れてしまうわ~っ、ふふふ、部屋の模様替えもしなくちゃ」
「……」
アレックは悩んでいた…子供が出来ると子供を優先しないと駄目なのか?なんでも好きな物を買い、妻となるエミリーの我が儘を受け入れ、生きていかなければならないのか…と、喜ぶ姿を見せるエミリーを見てアレックは、この先のパルリス家の未来が不安に思い始めていた。
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