第46話振り向いてくれるのを願い(43)【遅すぎた夫婦⑯】

庭師の二人はソフィアがいるとは知らずエミリーが温室を造るように頼んでいた事を話してしまった。

「…今の話しは本当なの?エミリーが温室を造るようにと…」

「は、はい…先ほど屋敷の中にいました私達を見てエミリー様が直接話をされました…」

「……」

庭師は戸惑いながらもソフィアに話をした。

「温室の話しは旦那様が無かった事にしたはずでは…」

「……エミリーが旦那様にお願いしたのかもしれないわ…」

「…そんな…大奥様の花を守ったと喜んでいたのに…」

「…まだ、温室を造ると決まったわけではないわ…旦那様に聞いてみるわ…」

「…奥様」

庭師達は戸惑う顔をお互い見てソフィアはメイド長と一緒に屋敷へ戻る時、一台の馬車が屋敷内に入り馬車の中から執事の姿が見えていた。

「奥様とメイド長も一緒でしたか…」

安堵の顔を見せる執事の手には書類が入るくらいの紙袋を持っていた。

「おはようございます…姿が見えないと思って…お出掛けをしていたのですね」

「…あ、おはようございます…奥様…旦那様の使いで出ておりました…」

「……役所へ行って来たのですか?」

「え!?」

執事はソフィアから言われ戸惑いメイド長に顔を向けた。

「奥様、旦那様とお話を……」

「…まだ、お連れしてはいません…今から旦那様の所へ行くところでした…」

「え…」

「…紙袋の外側に役所の印で分かりました」

「そうでしたか…」

執事の沈んだ顔を見てソフィアは分かってしまった。

「…離婚届けの書類ね…」

「あ!!」

「……」

「…エミリーが旦那様の子を身籠ったんですもの…旦那様と何も無かった私が離婚する事は決まっていたわ」

「奥様…」

「…うぅ…」

「……この場でお二人にお礼を言わせて…パルリス家に嫁いで一年の短い間だったわ…私を支えてくれてありがとう…旦那様との距離が離れてしまって何度二人に励まして貰った事か…この日まで旦那様の妻として生活をして来れたのも二人の支えがあったからなの…」

ソフィアは執事とメイド長に笑みを見せていた。

「奥様…わたくしは奥様のお力になれなかった事が悔やんでなりません…わたくしの力不足のせいでもっと旦那様にお声をかけていたらと…」

目に涙を溜める執事はソフィアに頭を下げる事しかなかった。

「…奥様…」

ソフィアはメイド長を抱き締めお礼を言った。

「メイド長、ありがとう…旦那様と話が終わった後に私の部屋に来て欲しいの…」

「…分かりました…」

ソフィアはメイド長から離れると執事に顔を向けた。

「…封筒を貰えるかしら?」

「え!?」

「私が直接旦那様に渡すわ」

「奥様…分かりました…」

「…ありがとう…」

ソフィアは、執事から封筒を受け取りメイド長と一緒に屋敷の中へ入った。






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