第43話振り向いてくれるのを願い(40)【遅すぎた夫婦⑬】

医師からエミリーの妊娠が分かったソフィアは、ベッドの上に座りぼんやりとしていた…

「……分かっていた事じゃない…エミリーが妊娠する事を…旦那様が屋敷にいる時はいつも一緒にいたじゃない…覚悟はしていた筈なのに…」

ソフィアは、ベッドから離れ机の側に来ると引き出しの中を開け一枚の封筒を取り出した。

「…私がいなくなって旦那様は私の手紙を読んでくれるかしら…でも、手紙を読んでも…もう…」

ポタポタと手紙を持つ手に涙の粒が落ち…アレックと式場で初めてあった時から今日までの日を思い出していた。

「…旦那様の元へ嫁いでから話をする回数は少なかったけれど…一緒に仕事をしていた時は幸せだった…いつの日か、旦那様が私に心をひらいてくれる日が来る事を願い待ち続けていたけれど…旦那様が手を差し出したのは私ではなくエミリーだった…」

ソフィアは、手に持っていた手紙を引き出しの中に戻しその隣に置いている父からの手紙に触れていた。

「……旦那様に父からの手紙を見て貰うつもりだったけれど…もっと早く手紙を父に出していたらエミリーを旦那様から遠ざける事が出来たかしら…今ではもう遅いけれど…後の事は旦那様とエミリーが決める事だから……」

パタンと引き出しを閉めたソフィアは、目を閉じ動こうとはしなかった。

コンコン!

「…奥様、わたくしでございます…」

メイド長が部屋の前に立ち側にはメイド二人が食事を持っていた。

「朝食がまだだとお聞きしましたのでお持ちいたしました…」

「…ごめんなさい…せっかくだけれど…」

「ううっ…」

「!?」

突然一緒にいたメイドの一人が泣き始めソフィアは驚き、もう一人のメイドもつられて泣き出した。

「あ、貴女達…奥様の前で…」

「す…すみません…うう…」

「…な、涙が勝手に……グスッ…」

「……」

ソフィアは二人のメイドの泣く姿を見て笑みを見せていた。

「…ありがとう…やっぱり頂くわ…」

「奥様…」

メイドの二人が、自分の為に泣いてくれているのだとソフィアは嬉しく思い、持ってきた朝食を食べた…

パルリス家の最後の食事だと思い料理を食べた。

「…メイド長、お願いがあるの…一緒に散歩をしてもいいかしら?」

「……分かりました…」

「…二人ともありがとう…」

「奥様!」

「奥様~っ!!」

ソフィアは二人のメイドに礼を言うとメイド長と一緒に散歩へと歩いた。

「……メイド長、エミリーの事は聞いたの?」

「…はい…後程…旦那様からお話があると思います…」

「……そう…」

静かな会話をしたソフィアとメイド長は廊下を歩き、ソフィアは屋敷内を見渡しながら歩いていた。





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