第42話振り向いてくれるのを願い(39)【遅すぎた夫婦⑫】
アレックは、執事からソフィアがパルリス家に貢献してくれた事を言われ戸惑い廊下を歩いていた。
「…分かっている…妻がパルリス家を支えてくれていた事を…離婚をしたとしても妻が屋敷を離れるのは考えてもいなかった…俺は妻に…ソフィアに屋敷に残って欲しいと思っている…昨日、彼女と向き合い会話をしてそう思った…俺は彼女が必要だと…手離したくはない…離婚したからと屋敷を離れる事はないんだ…」
アレックは手を握り締め今頃になってソフィアが大切だったと思い始めていた。
客室に戻ったアレックは、ソファーに座りお腹を擦り会話をするエミリーの姿があった。
「お母様は、あなたがお腹の中にいる事を知ってどんなに喜んだか分からないわ。あなたが生まれたら一緒にお買い物に行きましょう。お誕生日には貴族の人達を呼んで披露宴もするわ…旅行も行きたいわ。お母様は、お父様と旅行をしてあなたを連れて行きたい所もあるから家族で行きましょうね~っ」
笑顔でお腹を擦り会話をするエミリーを見ていたアレックは、何故か素直に喜ぶ事が出来ずにいた…それが後程分かるとは思わなかった。
「…食事を頼んで来たよ」
「ありがとう、旦那様!」
ビクッとアレックは体が固まりエミリーが一瞬妻のソフィアに見えていた。
「エミリー、その呼び方はやめて欲しい…」
「ええっ?どうして?私、もうすぐアレックの奥さんになるのよ。今から呼んでもいいでしょう?」
エミリーは、頬を膨らませ『旦那様』と呼んでは駄目だと言うアレックに不満の声を出していた。
(…実家に帰ってからエミリーは、俺を呼び捨てするようになったが…)
「はぁ…まだ、妻に離婚の話をしていないんだ…暫くはいつものように呼んでくれないか?」
ため息を吐くアレックはエミリーに名前で呼ぶようにお願いをした。
「分かったわ。暫くお預けね…あ!ねえ、お姉様も名前で呼んで欲しいわ。いつまでも『妻』と呼ぶわけにはいかないでしょう?」
「……それは…」
アレックはソフィアを名前で呼ぶようにと言われ言葉につまった。
「何?私には旦那様と呼んでは駄目だと言ったのにお姉様をまだ妻と呼ぶつもりなの?」
涙目になるエミリーはグスッと泣き出した。
「わ、分かった…つ、妻は名前で呼ぶようにするから…」
「本当?」
「…ああ…」
「ふふっ、早く私の事を妻と呼んでね!」
「…ああ…」
エミリーは、座っていたソファーを離れアレックの側に行き唇を重ねた。
「私ね、この子に沢山お話をしたの一緒にお買い物をして、庭園でお茶会を開いて、お誕生日には披露宴をして、旅行にも行きたいわ~っ!アレックと一緒に旅行した場所に今度は家族三人で行くの」
両手を合わせて思い浮かべるエミリーにアレックは声をかけた。
「…まだ、子供が生まれるのは先の事でエミリーにはこれから侯爵夫人として俺を支えて欲しい…」
「!!…侯爵夫人…ふふふ、早く皆から夫人と呼ばれたいわ~っ、ねえ、早く離婚の手続きをしてよ」
「その前に、エミリーに話があるんだ…」
「何?」
「俺と一緒に仕事を手伝って欲しいんだ」
「え!?仕事?どうして私が仕事を手伝わなくては駄目なの?」
不機嫌な顔でアレックに首を傾げていた。
「さっきも話したが、俺を支えて欲しいんだ…今の時季は忙しく一人では無理なんだ」
アレックは困った顔でエミリーにお願いをした。
「人を雇ってよ!私、仕事なんて無理だから!お腹の中には赤ちゃんがいるのよ」
「だ、だから、書類の整理だけでもいいんだ…」
「…ひど~い…赤ちゃんがいるのに…私に働くように言うなんて…」
「……」
涙を溜めてお腹を擦るエミリーにアレックは何も言えず、エミリーには仕事の話しをする事をやめたアレックは、モヤモヤとしていたが『エミリーが妊娠しているから不安定なんだ』と言い聞かせエミリーを宥めていた。
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