第41話振り向いてくれるのを願い(38)【遅すぎた夫婦⑪】

アレックがメイド長を呼び、医師と執事はアレックの方へ顔を向けると執事は目を閉じ壁の側に黙って立っていた。

「…旦那様、お呼びでしょうか?奥様には今からお連れいたしますが…」

「あ…先に、エミリーに食事を頼む。お腹が空いたと話してメイド長を捜していたんだ」

「……分かりました…軽めの食べ物を料理長にお伝えいたします…」

「ああ、頼む」

普通に会話をするアレックに執事とメイド長は気分は良くなかった。

「アレック様」

「ああ…医師も一緒だったのか…妻にはエミリーの妊娠の話しは…」

「はい、お伝えいたしました。戸惑われていましたが落ち着かれています…奥様も朝食がまだのご様子でしたのでお食事をお願いいたします」

「…そうか…分かった…メイド長、妻の分も頼む」

「…はい…」

「私はこれで失礼いたします」

「ご苦労だった…」

医師はアレックの側を通り思い出したように声をかけた。

「アレック様、奥様にもお話いたしましたが数日後に屋敷を伺います。その日にお時間を頂きたいのですが、奥様とご一緒にお子様についてお話をいたしましょう」

「!?…子供…?」

アレックは驚き真っ青な顔になっていた。

医師はアレックに伝えると屋敷を出て、メイド長と執事、そしてアレックが茫然と立っていた。

「…料理長の所へ行きまして奥様の部屋に参ります」

メイド長は先に歩き執事とアレック二人となった。

「……わたくしも失礼致します…」

「さ、さっきの医師の話しはどう言う事なんだ?」

アレックは焦るように執事に問いかけていた。

「…わたくしも分かりませんが…医師様から旦那様と奥様にお話があるのではないでしょうか?」

「……」

アレックは困った様な顔をしている姿を執事は見て歩こうとした。

「あ…今日、役所へ行って欲しいんだが…」

ピタッと執事の歩く足が止まりアレックの方へ顔を向けた。

「……ご用はなんでしょう?」

「…メイド長に聞いたと思うが…エミリーが妊娠をした…そのお腹の子は…私の子なんだ…」

「……」

「…執事も分かっていると思うが…侯爵家の世継ぎをエミリーが身籠った為、妻とは別れなくてはならなくなった…それで、離婚届けの書類が必要なんだ」

タンタンと話をするアレックに執事は黙って聞いていた。

「……分かりました。今から準備を致しまして役所へ向かいます」

「いや、まだ妻には話してはいないんだ…役所に行くのはその後でも…」

「わたくしは、一日でも早く奥様に屋敷を出て行かれました方が奥様のためだと思います…奥様の事を少しでも思うのでしたら旦那様との離婚は早い方が宜しいかと…わたくしは思いますが…」

「……っ」

「旦那様、これから忙しくなると思いますが、まずはエミリー様に学んで頂かなくてはなりませんが?」

「エミリーに何を学ばせるつもりなんだ?」

「エミリー様が侯爵家に嫁がれましたら、ご一緒にお仕事をされるのでは?書類の整理に計算仕入れ先の取り引き、お店に出向きお客様との接客…時には他国からのお客様が来られますので、国事の言葉が違いますから話せるようになりますように」

「え…」

「その事をお考えになりました上で、奥様と離婚をするのではありませんか?奥様はパルリス家に嫁がれて勉強をなさっていました…旦那様は知っていましたでしょうか?」

「……」

アレックは執事からソフィアの事を言われ何も言えなかった…

「エミリー様を迎えます旦那様には悪いと思いますが、エミリー様の今の生活を変えていただかないと…旦那様が苦労されると思います…」

「……」

「では、わたくしは準備が御座いますので…」

執事はアレックの側を離れ馬車の準備に向かった。

アレックは執事から言われ、妻のソフィアが屋敷を出て行く事は考えていなかった。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る