第40話振り向いてくれるのを願い(37)【遅すぎた夫婦⑩】
メイド長から話を聞いた執事は、深呼吸をした後大きな息を吐いた。
「……奥様には…」
「…今、医師様が奥様にお伝えしていると思います…」
「…そうですか……」
「…奥様は、エミリー様が妊娠していたのをご存じだったのでは…と思うのです…」
「奥様が?」
「食卓の場で、エミリー様の異変に気づきましたのは奥様でしたから…」
「…そうでしたか…奥様が…」
執事は手を顔に当て「これからどうすれば…」と声に出し悩む姿を見せていた。
「…それから…」
メイド長は途中話を止めてしまい、目に涙を溜めている姿を見た執事は驚き戸惑っていた。
「……メイド長…まだ、何か…」
「…ご、ごめんなさい…大事な事を話さなくてはならなかったのに……」
メイド長は、執事の前で涙を拭い息を吐いた後震える声で話をした。
「……今日、旦那様は奥様に離婚のお話をなさいます…」
「な!?」
グラッと体が傾き壁に寄り添う執事は真っ青な顔になり、慌てたメイド長が執事の腕を掴み支えていた。
「…メイド長…その話しは…」
「……旦那様が私に直接お話を致しました…メイド二人も聞いています…」
「……」
「旦那様とエミリー様は、奥様に離婚をしていただくように前々からお二人で話をしていたようです…」
「な!?では、エミリー様の妊娠も…」
「…奥様に屋敷を出て貰うにはエミリー様に子供を授かる事が早いと考えたのでしょう…旦那様は一度も奥様と夜を過ごされた事はありませんから…」
「…つ…はぁ…私は…旦那様に奥様と向き合うようにと…話をした…それが…もう…」
手を握り拳で壁に押さえる執事は震えていた。
「…今のパルリス家は奥様がいなくては…旦那様は分かっていない…店では他国から来る客も多い為、奥様が接客をなさっている…仕事も奥様に任せ…旦那様も奥様には感謝しなくてはならないと言うのに…それを旦那様は裏切るとは…」
「……私達はどうしたら…」
「…あの…お二人とも何かあったのですか?」
執事とメイド長は側に来ていた医師に驚いた。
「あ…い、いえ、なんでもありません医師様…」
「足が躓いて…年ですかなーっ、ははは」
「?」
(…エミリー様のご懐妊で戸惑っているのだろうか?奥様が心配でお二人で話をしていたのだろう)
「奥様の診察は終わりましたのでお知らせに来ました」
「それで…奥様のご様子は…」
「エミリー様のご懐妊をお知らせしまして、動揺されましたご様子でしたが、今日はいつもよりお話をされて落ち着かれたご様子でした」
「…そうですか…」
「…奥様…」
沈む顔を見せる執事とメイド長を見て医師は(何かあるのか?)と二人に声をかけようとした。
「何かあった…」
「メイド長!」
声を出したのは三人の側に近づくアレックの姿があった。
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