第39話振り向いてくれるのを願い(36)【遅すぎた夫婦⑨】
「…医師様…有り難う御座いました…」
「いえ…私の方こそもっと早くお話を聞くべきでした」
「…医師様…」
ソフィアは医師に笑顔を見せた。
「奥様は笑顔が良くお似合いですから、趣味をお持ちだと心も晴れます」
「趣味はあります。料理を作る事が好きで屋敷内の皆と一緒に作りました」
「そうでしたか料理をお作りだとは、アレック様がお喜びになります」
「あ…旦那様は…私の料理が口に合わなかったと言われましたから…私が厨房に立つのは相応しくないと叱りを受けました…」
「は?それはアレック様がおかしいのです。貴族でも料理をする者もいるのですから、私でしたら喜んで奥様の料理を食べます」
「…医師様…」
笑みを見せる医師にソフィアは涙を溜めてボソッと声に出した。
「……旦那様が医師様だったら……」
「え?」
「いえ…なんでもありません…有り難う御座いました…」
「奥様と少しでもお話ができて良かったです。また、お伺い致します」
「…はい」
ソフィアは、医師の姿を目に焼き付け部屋を出る姿に頭を下げると医師に別れをつげた…
その頃、メイド長は執事に会いエミリーの妊娠とその父親がアレックだと話をした。
執事は真っ青な顔になり茫然と立つていた。
「…リチャードさん、大丈夫ですか?」
「え…あ…ああ……」
返事だけをした執事はまた黙ってしまい、執事とメイド長は言葉を失った。
その様子を数名のメイド達が見ていつもと様子がおかしいと話始めた。
「ねえ、リチャードさんとメイド長様子が変だと思わない?」
「…そうよね…さっきから黙ったままだから何かあったのかしら?」
「何かあった時は、あの人に関係あるんじゃないの?」
メイドが二人のメイドに声をかけ三人会話が始まった。
「あの人って…エミリー様の事?」
「他にいないでしょう?私あの人嫌いだから」
「「!」」
「朝あの人が屋敷の中に入って来た時、私とばったり会ったのそしたら『貴女、私の荷物部屋に持って行ってくれない?丁寧にお願いね』と言われた時はイライラしながら部屋に持って行ったわ」
メイドは、エミリーに会った事を話し不機嫌な顔をして二人のメイド達の側を離れて行った。
「…私もあんな風に言われたら嫌かな…」
「朝から災難だったわね…彼女…」
メイド達は、また今日からエミリーがいると思うとため息が止まらなかった。
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