第38話振り向いてくれるのを願い(35)【遅すぎた夫婦⑧】
「…他の皆にはまだ知らせないように…エミリー様の妊娠を聞き騒ぎになるといけないから…」
「うう…わ、分かりました…」
「…うっ…う…旦那様…酷い…うう…」
メイドの二人は涙が止まらず、そんな二人をメイド長は声をかける事しかなかった。
「…私は、執事に伝えなくては…」
メイド長は、執事にエミリーが妊娠した事を伝えに二人のメイドと離れて行った。
その頃ソフィアは医師の診察を受けていた。
「お体の方はどうですか?」
「…今日は食欲がなくてまだ朝食は食していません…でも、昨日は結構食べる事ができました…」
ソフィアは医師に笑みを見せ、昨日の夜は食事が出来たと話をしていた。
「そうですか、それは良かったです。無理なく少しでも食事をお取りください」
「はい、分かりました」
医師は診察の道具をカバンの中に入れ迷っていた。
(…奥様にエミリー様が妊娠をした事をお話していいものか…ご姉妹だから喜ばれると思うが…)
ソフィアは医師の顔を見て悩んでいるのだと分かった
「…医師様、お話があるのでは?」
「え!?あっ」
カチャ、カチャ、とガバンから落とした道具を慌てて医師は取り、ソフィアの方を見た。
「…妹の事で私にお話があると思いました…」
「あ…お気づきだったのですか?」
「…はい…今朝の朝食で妹の様子がおかしかったものですから…」
「そうでしたか…奥様にお話をすればいいのか悩んでしまうとは…ははは」
苦笑いを見せる医師を見ていたソフィアは、両手を握り締めると医師はエミリーの話をした。
「…それで医師様妹は…」
「はい、ご懐妊になっております」
グラッと目の前が真っ暗になったソフィアは医師の前に倒れ込んだ。
「!?奥様!!」
「…だ、大丈夫…です…」
医師は、エミリーが妊娠している話を聞かせるべきではなかったのかと戸惑っていた。
「…奥様、申し訳御座いません…エミリー様の事はメイドに後でお伝えするべきでした…」
「……いえ、医師様から直接お聞きしたいと思っていましたから…すみません…」
ソフィアは医師から支えて貰った手を離し笑みを見せていた。
「有り難う御座います…医師様…」
「…余りお考えにならないように…悩みなどは私がお聞きしますからお話ください…」
「……はい…」
「…それから、奥様のご両親にエミリー様の事をお知らせしたいのですが…ご主人の方にもお伝えを…」
「……」
(…駄目よ…泣いては…また医師様に…)
「…あ…私が、お知らせしますから…」
「そうですか、分かりました…私はこれで失礼致しますが…日を改めましてアレック様とご一緒にお話を致しましょう」
「え…」
「大丈夫です奥様、私も一緒ですからお子様のお悩みをご一緒にお話致しましょう」
「……ふぅ…」
ソフィアは、我慢していた涙が流れ落ち医師の前で泣き続け医師はソフィアの背中を擦っていた。
(…ありがとう…医師様…貴方にお会いしてどんなに安らいだ事でしょう…何度も相談しなくてはと思い胸の内に仕舞い込む私の悪い癖…ごめんなさい…今までありがとう……)
ソフィアは最後に医師に甘え泣き続けた…
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