第35話振り向いてくれるのを願い(32)【遅すぎた夫婦⑤】

「具合でも悪いのか?」

「…なんだか胸がムカムカするの…」

エミリーは口を押さえアレックに話をしていた。

ソフィアはエミリーを見て(…こんなに早く…二人が一緒にいれば、いつかはこの日が来る事を覚悟はしていたわ…でも…)

ソフィアは目を閉じ、泣きたいのを我慢して目を開けるとエミリーへ顔を向けた。

「……エミリー…貴女、妊娠しているの?」

「え!?…妊娠…」

「!!に……エミリー…」

エミリーはお腹を触り笑みを見せるとアレックの方に顔を向けた。

「私…アレック様…」

「…と、とにかく医師だ!医師を呼ぼう!!」

「ええ」

笑顔を見せるアレックとエミリーは席を立ちアレックはハッ…とソフィアの方を見た時、今にも泣き出しそうな顔をアレックに向けていた。

「アレック様、早く医師様を呼んで」

「え、あ、ああ…」

アレックはエミリーを支え、ソフィアには声もかけずに食事の部屋を出た…一人残されたソフィアは涙を流し「とうとうこの日が来てしまった…」と声に出し泣き続けた。

屋敷内は騒がしかった。

アレックは執事に医師を呼びエミリーを客室のベッドの上に座らせた。

「アレック様、もし本当だったら…私達の…」

「ああ…だが、まだ医師が来てからだ…」

コンコン!

「旦那様、お呼びで…」

メイド長は部屋を入ると同時に声を出していた時、ベッドの上にはエミリーとアレックが一緒に座る姿を見て途中で声が止まった。

メイド長と一緒にいたメイド二人も驚いた顔で見合わせていた。

「ああ…呼び出して済まない医師が来るまでこの部屋にいて欲しい」

「医師様ですか?…まさか奥様が体調を…」

「…いや、違うんだ…医師が来ない事には…」

「?」

メイドの二人は首を傾げ、メイド長はアレックとエミリーが一緒にいる姿を自分達に見せているのか気になっていた。


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