第32話振り向いてくれるのを願い(29)【遅すぎた夫婦②】
食事の部屋を一緒に出たアレックとソフィアは、二人だけで一緒にいるのは結婚をして初めての事だった。
(…旦那様が初めて私の話を受け入れてくれた…)
(…こんなに安らいだ時間は久しぶりだ…)
一緒に歩く廊下は、二人の距離は離れていたが夫婦になって初めて話が出来た時間だった。
「……旦那様、私から二つほどお願いがあります…」
「お願い?」
「エミリーにお金をお使いになるのは控えて欲しいのです。」
「っ…」
「以前も申しました…妹は欲しいものはなんでも手に入れました…服に靴に宝石…そして…」
ソフィアはアレックを見たあとグッと唇を噛み話の続きをした。
「妹を可愛がって頂き…我が儘も聞いてくださいました…ですが、これから先は我が儘では生活ができません…」
「…それはどういう…」
「…エミリーもこの先、結婚をして家庭を持つと思います…苦労を知らない妹ですから…お金の大切さを知って欲しいのです…その事を旦那様がエミリーにお話ください」
「俺が?君が話せば…」
「エミリーにお金を出していますのは旦那様ですから…」
「!!つ…」
アレックは気まずいのかソフィアに顔を向ける事ができなかった。
(あ!)
アレックは服の話が出て思い出した。
「服を買いに行こう!」
「え!?」
「君にまだ、服を買いに一緒に行っていなかった事を思い出したんだ」
笑顔を見せるアレックはソフィアの機嫌取りをしていた。
「…私をエミリーと同じようにしないでください!」
「えっ…あ…いや、俺はただ君に何も…」
「『服を買いに行こう』…この言葉を何回聞いたか分かりません…私は旦那様との買い物を諦めました…」
「あ…っ…」
アレックは歩く足を止めたが、ソフィアは前を歩いた。
「……もう一つのお願いですが…屋敷の庭に白い花を植えてくれますか?」
「白い花?」
ソフィアは歩く足を止め振り向かずにアレックにお願いをした。
「…私が好きな花の色です…服の代わりに白い花を植えて欲しいのです…」
「…分かった…君の好きな花を植えよう…」
「有り難う御座います…」
アレックは花で機嫌が良くなればとソフィアに約束をした。
ソフィアの部屋まで送ったアレックはソフィアに声をかけた。
「…こ、今夜…俺の部屋へ来ないか?」
「!?」
ソフィアは部屋の前でアレックが誘った事に驚いていた。
「…今日…君と二人で食事をして会話をして…楽しいと…君から叱りを受けたりもしたがこれが夫婦なんだと…心から思ったんだ」
「……」
「会話だけでもいいんだ…朝まで君と話せたら…」
「……今頃…ですか…」
「え!?」
ツー…とソフィアの目から涙が流れ落ちアレックは驚き戸惑っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。