第31話振り向いてくれるのを願い(28)【遅すぎた夫婦】

アレックは茫然とした顔でソフィアを見ていた。

「旦那様?席にお座りにならないのですか?」

ハッと我に返ったアレックは、久しぶりに見たソフィアに戸惑っていた。

(…妻の顔を見たのはいつぶりだろう…こんなに大人びていたのか?)

「私の顔に何かついているのですか?」

「え!?あ、いや…久しぶりだから…エミリーとは似ていないと…あ…」

思わずアレックは口を手で押さえていた。

「…私は父親似ですから、あの子は母に似ていますから…」

「そ…そうか…」

(俺は何を焦ったように…)

席に着くと食事が始まった。

「…か、体の方は大丈夫なのか?」

「はい…今は気分が良いので旦那様と二人で食事がしたいと思っていました」

「…そうだな…君と二人で食事をするのは…」

(…いつからだ?妻と二人で食事をしたのは…)

アレックは言葉を詰まらせ、思い出せずにいた。

「無理に思い出さなくてもいいです…結婚してからの旦那様は忙しくて、一緒に食事を取る事ができませんでしたから…」

「そ、そうだったか?何年も過ぎた感じだ…」

「…その半年にエミリーが屋敷に泊まるようになって旦那様と二人で食事ができなくなりましたが…」

「…っ!」

アレックは覚えていた…エミリーが屋敷へ来てから妻のソフィアと一緒に食事をしなくなった事を…エミリーは屋敷の料理の好き嫌いがあるため、いつもアレックと一緒に外で食事をすませる日が多かった。

「…こ、これからは君と一緒に食事をするようにしょう…」

ソフィアは『一緒に食事を』とアレックから聞き驚いていたが、今ここに二人でいるから言えた事でエミリーがいたら言わなかっただろうとソフィアは息をはいていた。

「…私の事は気にする事はありません、エミリーが機嫌を悪くしましたら宥めるのが大変でしょう…」

「…っ」

ビクッとアレックの顔が真っ青になり、ソフィアは顔を見た後食事を続けた。

「…旦那様、屋敷内のカーテンと絨毯ですが以前の模様に変えてください」

「!…しかし…」

「これから先もエミリーの好きなようにするつもりですか?」

「え!?」

「私は、以前の落ち着いた絨毯とカーテンが好きでした…今の屋敷内を親族の方がお見えになった時、旦那様はお応えできますか?」

「…親族…」

アレックは食事の手を休め悩んでいた。

「このままでいいのでしたら私は何も言いません…」

「……いや、考えておこう…」

「え…」

「…俺もやり過ぎたと思っていた…君から言われ確かに親族達が来た場合、言われるのは俺だから…それは避けたい…」

「旦那様…」

苦笑いを見せるアレックを見ていたソフィアは涙目になり下を向いた。

(…貴方を諦めようとしたのに…)





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