第28話振り向いてくれるのを願い(25)

私は、旦那様とエミリーがいない屋敷を毎日が充実していた。

「奥様!?何を…おやすみでは…」

「今、気分がいいの…旦那様、仕事を溜め込んでしまって私の仕事はそのまま残して酷いのよ」

愚痴を言いながらソフィアは仕事を始めていた。

「お、奥様、医師様からお体を休めますようにと言われております…」

メイド長が戸惑いながらソフィアに仕事を休むように話をした。

「…本当に気分が良いの…今だけ私の自由にして欲しい…二人が帰って来たらどうなるのか分からないから…」

「…奥様…」

笑顔を見せるソフィアは、屋敷へ初めて来た頃と変わらない笑みをメイド長に見せていた。

「…分かりました奥様…何か御座いましたらご連絡ください…」

「ありがとう…」

ソフィアは働いた…メイドの仕事を手伝い、庭の草むしりを手伝い、時間が空いた時はメイド達と休憩を楽しんだ。

「奥様、お疲れではありませんか?」

「私達メイドの仕事までもして頂いて…」

「気にしないで、一人でいると色々と考えてしまうから…皆と一緒にいる方が楽しいから」

「奥様…」

「さあ、今夜はパイ料理を作るわよ!」

賑やかな笑い声が響き、ソフィアは毎日を楽しく過ごしていた。

そんなある朝の事だった使用人が慌てて執事の所へ駆け寄った。

「リチャードさん!リチャードさん!!」

「久しぶりに私の名前を呼ばれて誰かと思いましたよ。どうしたのです?そんなに慌てて…」

「だ…旦那様がお帰りに…」

「は?旦那様のお帰りは明日の夕方頃と聞きましたが?」

「ば、馬車がもうすぐ屋敷へ来るんだ!」

「!!」

執事は驚き、メイド長に知らせると屋敷内は騒がしかった。

「奥様、奥様!」

仕事部屋にいるソフィアにメイド長が慌てて知らせに来た。

「どうしたの?そんなに慌てて…」

「だ…旦那様がお戻りを…」

「え…」

バサッと書類の束を床に落としたソフィアは、笑顔ではなく真っ青な顔になり体が動けずにいた。

「……旦那様が…帰って…」

「奥様…」

「……旦那様が帰って来るのは明日の夕方ではなかったの?」

「私達もそう思っておりましたが…」

「……」

ソフィアは震える体を抑えていた…

「…そう、分かったわ…旦那様の出迎えに行きましょう…」

「奥様…」

ソフィアはアレックを迎える為、メイド達と一緒に玄関の側に立ちアレックを迎えた。

「お帰りなさいませ、旦那様」

メイド達の声と同時にアレックが六日ぶりに帰って来た。

アレックは周りを見渡し声をかけた。

「エミリーは、まだ実家から帰っていないのか?」

ピクッとソフィアの手が動きグッと押さえていた…

「……まだで御座います…」

「そうか…帰っていると思ったが…エミリーが帰って来たら知らせてくれ」

「…分かりました…」

執事にエミリーを言付けアレックは部屋へと向かった。

ヨロッと体が傾いたソフィアにメイドが支えた。

「奥様!?」

「…大丈夫よ…ありがとう…皆ありがとう、久しぶりに楽しかったわ…」

「奥様…」

ソフィアはメイド長に支えながら仕事部屋に向かった

「奥様…お休みになられては…」

「…後少しで終わるから…旦那様は私を見たのに何も話さなかったわ…一言でも『大丈夫だったか』と言ってくれたら…旦那様はエミリーを捜して…」

「奥様…お考えにならないように…お体に堪えます…」

「…私はもう、旦那様を受け入れる事が出来なくなってしまったわ…声や顔を見て聞いただけで私の体は震えてしまうの…」

ソフィアは震える手を見てメイド長もそれを見た時、俯いてしまった。








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